カリキュラム検討研修会
終業式が終わり、夏休みに入りました!
とはいえ、夏期講習等がありまだまだ仕事は続きます…
さて、先日は教職員の校内研修会がありました。
私は今年度研修会担当なのですが、
今回の研修テーマを、教科ごとのカリキュラム検討、としました。
これまでの全体研修で、探究的な学びについてや、IBについての研修を重ねてきて、
そろそろ教科での具体的な話をしたい、実践の共有がしたいという気分が高まってきた頃合いでした。
まず最初に行ったのが、育てたい生徒像のイメージをしぼる、ということでした。
勤務校では、HPやパンフレット等で、教育理念、目標、育てたい生徒像等がいろんな表現で書かれており(確かにどれも良いことなのですが)、結果として教職員全体として共有できない、「探究型授業」という手段が目的化しがち、進学実績の方に目が行きがち、という状況がありました。
ちなみにIBでは、このあたりを「IBの使命」や「10の学習者像」「学びの方法(ATL)」というふうに、全員が共有できる方法でまとめており、さすがに上手いなあ、と思います。
そういう状況でしたので、今回の研修会に先立ち、管理職と話し合いを重ね、育てたい生徒像を一言で言うと「主体的に学ぶ生徒」である、と確認しました。
そして、それを達成するためのカリキュラム検討を研修会のテーマとしました。
国語科を例にとると、
これまでのカリキュラムでは、育てたい生徒像があいまいだったために、担当者によってやっていることがばらばらだったり、シラバスが教科書の目次をなぞったものだったり、中1から高3までにかけて(私の学校は中高一貫校です)生徒が何を身につけていくのか、ということがあまり意識されていませんでした。
また、大学入試のために何を身につけさせていくか、ということが目的化しがちでした。
今回の研修では、そのような状況の改善を目指しています。
まず、一番上に学校全体で「育てたい生徒像」を置きます。
次に、教科としての「育てたい生徒像」を一言で表現します。教科として、どう貢献するかということです。
今回は、育てたいう生徒像を達成するために、「コンテンツ」と「スキル」という二つの柱を立てました。
コンテンツは、教科として教えたい知識・内容です。
スキルは、卒業までに全員に身につけさせたい力です。
入学生のレベルをふまえながら、中学から高校にかけて何を教えていくか、どのような力を段階的に身につけさせていくか、ということを一つ一つ確認していきました。
もちろん、担当の先生によって意見の違いや価値観の違いはありますし、議論になったり揃わないところはたくさん出てきます。
ただ、全員が育てたい生徒像を共有し、そのための手段と方法を工夫する、という第一歩は踏み出せたのかなと思っています。
石村先生の勉強会に参加しました
パリインターナショナルスクールで、DP文学を教えていらっしゃる、石村先生の私的勉強に参加してきました。(勉強会は明日もありますが、仕事のため1日目だけの参加です…)
今回はカリキュラム改訂のタイミングだということもあり、前半は主な変更点の確認。
後半は、試験課題1、試験課題2をそれぞれ想定し、どのような問いを生徒に投げかけるか、というワークが中心でした。
そしてこのワークが面白かった!
IBの最終試験では、初見のテクストの分析や、文学作品の論述が課題になりますが、具体的な一つの作品に限定されるような問い、答えが一つに決まるような問いは最終試験の問題になりません。
この点、いま問題になっている共通試験とは発想が根本的に異なります。
(共通試験の記述問題では、なるべく機械的に採点できるように答案にさまざま条件がついてきます)
限定しすぎず、また広すぎもせず、
「生徒の力量によって答えが深くなったり、あるいは浅くなったりする」そんな設問が良いとのことです。
例えば、
・語り手の視点は、テクストの内容にどのような影響を与えているか。
・テクストにはどのような空間が描かれているか
・テクストにはどのような比喩が用いられ、どのような効果をあげているか
・テクストにはどのようや女性観が表れているか
といったような問いを出していくのです。
教師が背景となる文学理論をしっかりと理解していることはもちろん大切ですが、高校生に直接的に文学理論を教えるのではなく、
それを適切な難度の問いに仕立て直し、子どもたちに提示する。
その問いに取り組むことで、テクストを読んで自由に想像し、考える楽しさを体験する。
いろんな人がいろんな読みをする面白さに気づく。
高校の授業で「文学」を教えるイメージが、だんだんわいてきました。
とにかくまずは自分が文学にもっと親しまないと!
高校生の演劇を観てきました
1学期の授業と学期末テストが終わり、少し落ち着きました。
結局、今学期も後半はどたばたになってしまったなぁ…と思い返しているところです。
これから振り返りと、2学期からの計画の練り直しをしていこうと思います。
今日は、勤務校の演劇コースの公演を観てきました。
劇の内容も面白かったのですが、出演する高校生のエネルギー、表情がとても印象的でした。
「青春」という言葉が何度も頭をよぎり、正直うらやましかった。
同時に、あの子たちのようなはじける笑顔をどうしたら授業で引き出せるのか、ということも考えてしまいました。
探究とかIBとかいろいろやっているけれど、結果、子どもの元気を失わせていないか?
はじける笑顔につながっているか?
大事なところを見失わないようにしたいと、劇を見終わって改めて思いました。
方向性の違い
今年度、高校2年生の現代文と、DP「言語と文学」のクラスの両方を受け持っています。
全国大学国語教育学会
先日茨城大で学会が開かれ、国際バカロレアの公開講座に参加してきました。
聴講というよりは、先日出した本の宣伝と販売のお手伝いが私の主な役割です。
どれくらい来てくださるのか心配でしたが、始まってみれば50人を超える規模で、関心の高さがあるうかがえました。
最初は国際バカロレアと概念ベースの授業づくりについての概説です。
先日の川崎の同好会の時も感じたのですが、この理論的な部分が、大事ではあるのですがなかなか話が伝わりづらい…。
しかも必要な項目が多数ある。
ここの面白さをどう広めていくかが、今後の課題なんだろうと思っています。
まずは具体的な授業実践例から入り、どういう思考過程を経てその単元を計画したかを説明する、というやり方の方がいいのかなあ…。
続いて評価の話、実践事例紹介、質疑応答と続きました。
参加者の方からいただいた質問を紹介しておきます。
「重要概念」として16の言葉が挙げられているが、なぜそれが選ばれているか、なぜその並びなのか。
これは先日の川崎でも出た質問ですが、
世の中に無数にある「重要概念(抽象度の高い概念的キーワード)」から、複数の教科、複数の学年でまたがって使えるものをIBの側でピックアップしています。
並びは、英語のABC順です(訳すと分からなくなる)。
IBの要件として、特に各教科によって重要な4つの重要概念は、1年間のカリキュラムの中でも「用いる」ように指定されていますが、
その概念を「教え」なければならない、というわけでも、それ以外の概念を使ってはいけない、というわけでもありません。
この辺り、「概念」は単元の設計の段階で教師の発送を広げたり、実際の学習活動の中で生徒の学びを深めたりするのに有効な「ツール」だと私はとらえています。
まだまだ自分の中でも整理できていませんが。
その他、面白かった質問としては、IBのカリキュラムで大事なものは何か、IBによって生徒はどう変わるのか、それを、IB用語を使わずに説明してほしい、というリクエストをいただきました。
私は、課題を通して、協力して「何とかする」力が身につくこと、そして遊びと学びの境界があいまいになっていくことを、魅力として説明しました。
伝わったかなー。
川崎の国語同好会に参加しました
先日は川崎の国語同好会に参加してきました。
テーマは「国際バカロレアの授業づくり」ということで、先日発売した本の内容についての発表がありました。(私は発表を聞いている側)
本を作っているときから、IB以外の国語科の先生方にも読んでほしい、との思いがあり、できるだけ噛み砕いて説明することを意識してきました。
けれど改めて(客観的に)発表を聞いていると、やっぱり難しいという印象が先に来てしまいました。
重要概念、関連概念、グローバルな文脈、ATL…立て続けにどんどん言われても、なかなか頭に入ってきません。
私は勤務校では、仕事としてやらなければならないという義務感もあり、3年くらいかけて、実践しながらゆっくり納得してきました。
果たしてIB校でない先生方に、その良さをどのようにお伝えするのが有効か…
今回の発表では、また昨日のワークショップでも、テキストを決めて、そのテキストと概念を結びつける、という方法がとられていました。
「概念ベース」を体験するのに、IB校以外の先生方にとっても無理のない方法なのかなと思います。
この方向性で、もっと効果的なやり方はないのか、校内研修もあるので検討してみたいと思いました。
ある参加者の先生から、
教科書教材を読んで作文を書かせたいときに、この概念のリストを渡し、生徒に作文の内容を検討させるのはどうか、というアイデアが出ました。
日本の中学校での応用として、とても良いと思いました。
このように、みんなで「いいとこ取り」していくと、国語のアプローチも広がって楽しいのではないでしょうか。
IBでの単元の作り方
国語の授業で「単元を作る」というと、教科書に掲載された教材をもとにして、テキストベースで考えるのが一般的です。
1年間で考えてみると、時々は教科書を離れた単元を組むこともあるでしょうが、概ね教科書の目次に沿って単元設計をしていく先生が多いのではないでしょうか。
IBのカリキュラムでは、授業は概念ベースであることが求められています。テキスト内容を教えて終わり、とはなりません。そもそも教科書がありません。
そこでMYP(中等教育プログラム)では、扱う概念や、概念的な「探究テーマ」を設定し、そこから授業内容の検討、扱う教材の選定を行なっていきます。
さて、今回のワークショップではDP(ディプロマ・プログラム)が、これまでより概念ベースになったことが示されました。
ワークショップ内で検討されたDPの単元の作り方は、IB以外の授業設計にも十分応用可能だと思いますので、紹介します。
今回ワークショップで取り上げられた単元の作り方は、次の3つです。
①概念をもとにつくる
②グローバルな問題をもとにつくる
③テキストをもとにつくる
それぞれ見ていきましょう。
①概念をもとにつくる
IBの授業では、コース内で扱うべき抽象度の高い概念が示されています。
重要とされているのは、次の7つの概念です。
・アイデンティティー
・文化
・創造性
・コミュニケーション
・観点
・変換
・表現
教師は、まず生徒の状況をふまえて、扱いたい概念を決め、それにふさわしいテキストを選択していきます。
一番「概念ベース」の作り方なのですが、スタートが抽象的すぎてなかなかテキストを探しにくいのが難点です。
②グローバルな問題をもとにつくる
ここでいうグローバルな問題とは、ジェンダー、民族、戦争、環境問題、といった今まさに世界で問題となっているようなことです。
教師は、生徒と共に考えたい問題を選び、それにふさわしいテキストを選択します。
③テキストをもとにつくる
今回のワークショップでは、「間テキスト相互作用」という用語が頻出しました。
テキストをもとにするといっても、1つのテキストだけを取り上げて単元を終わりにするのではなく、
そのテキストにどういった「非文学テキスト(写真、映像、ウェブなど)」を組み合わせ、生徒とどういう探究をするか、検討します。
①〜③いずれにしても、教師の側で沢山の引き出しを持っていることが求められます。
一人ではアイデアが偏るので、教科内外の先生たちと、情報交換を積極的にしていくことが大事です。
こういうことを一人で考えていても、あんまり面白くないんですよね…。
そのために、教員間でのコミュニケーションや、気楽に自由に意見交換できる教科会の実施が不可欠です。