Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

漢字の学習法を見直す

新学期に入り、生徒に不安なこと、今年度期待することを聞いていたら、

漢字が書けない、苦手だからどうにかしたい、という意見が多く出ました。

 

教科書の新出漢字や、漢字ドリルから範囲を決めて漢字テストを行ってきましたが、生徒の自主努力に任せっぱなしで、たいした指導やアドバイスはできていませんでした。

 

一部の真面目な生徒は事前に準備、練習してくるし、普段から新書などを自分で読んでいる生徒はあまり勉強してこなくてもできます。

 

逆に、テスト直前に慌ててテキストを開き始める生徒は、仮に短期記憶で少しは書けたとしてもすぐに忘れてしまいます。最初から諦めて何も勉強しない生徒も多くいます。

 

こちらとしては、再テストなどで対応するのですが、どうも徒労というか、効果を感じません。

 

教員生活もずいぶん長くなってきましたが、いまだにこんな体たらくです。

そこで、今年度は、思い切ってやり方を変えてみたいと思っていました。

 

そんなタイミングで見つけて、参考にさせてもらったのが、土居正博『クラス全員が熱心に取り組む!  漢字指導法 -学習活動アイデア&指導技術-』(明治図書、2019)です。

小学校での実践ですが、中高でも使える内容がたくさんありました。

 

本書では、「漢字が書けるとはどういうことか」という根本的な問いに立ち戻り、「漢字練習(文字学習)」と「漢字活用練習(語彙学習)」を明確に区別して指導するアプローチが紹介されています。

 

この本では、漢字学習のステップを、

 

1  見慣れる

2   読める

3  大体の形が分かり、書ける

4  とめ・はね・はらいなど正確な形が分かり、書ける

5  様々な使い方が分かる

6  自分が作文で書くときなどに自在に使いこなせる

 

の6段階で整理していました。1〜4が文字学習の段階、5と6が語彙学習の段階、に当たります。

 

私もこの本を読む前に、似たようなことは考えていたのですが、段階を示してそれに即した学習法を提示する、というアプローチまではできていませんでした。

この本を読んで、その有効性が分かった次第です。

 

今回、漢字に苦手意識を持っている高校生に対して、自分の勉強法をもう一度見直してみよう、という話をしました。

 

私の場合は、「漢字を知っているとはどういうことか」という問いを生徒と共有した後、次の五段階で説明しました。

 

0  読めない、見たことがない

1  読める

2  文章中で意味が分かる

3  自分の作文で使える

4  書ける

 

そして、まずは0→1にするために、テキストに出てくる漢字を音読すること、

1→2にするために、テキストの例文や語句の意味を音読すること、辞書を引くこと、

2→3にするために、テキストの例文以外の短文を書いてみること、

といった勉強法を紹介しました。

 

ほとんどの生徒は、漢字テストの直前に慌てて覚えようとするため、まずテキストを読んで言葉として漢字の意味を理解する、というステップをすっ飛ばしています。

まずはこのステップにじっくり時間をかけよう、そうすると3→4の勉強をした時に忘れにくくなるよ、という説明をしました。

ほとんどの生徒が、こういうことを考えたことがない、といった感じで新鮮な反応でした(こちらも、こういったことを伝えることができていなかったことを反省しました)。

 

根本に立ち戻り、勉強の仕方をゆっくり一緒に考えることで、モチベーションアップにもつながったと思います。

あとはこの熱を冷まさないように、教師が継続的に声がけし、勉強をサポートしていく必要があります。