Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

【読書】『シン・ニホン』学校のあり方、その議論の土台に

為田裕行さんの呼びかけに応じて、

安宅和人『シン・ニホン』についての感想を書きました。

blog.ict-in-education.jp

以下、私が書いた感想です。

とても面白く読みました。
読みながらずっと思っていたことは、この本を使って、学校内で有志の読書会や、職員会議でディスカッションなどをやってみたい、ということです。
私の勤務校でも、授業でのICTの活用が進められていますが、どのように使うのか、といった研修はあるものの、そもそもなぜ使うのか、学校は何を目指しているのか、どのような生徒を育てたいのか、などの根本的な議論や、意識の共有が不足しているように感じています。
この本に挙げられているデータや例を用いながら、先生同士で、まずは自分たちの目指す教育を、現実の文脈に即した形で話し合うと、職場づくりとして有効だと思います。
また、日本の高等教育の落ち込みについても議論したいところです。
私が勤めているような進学校では、どうしても東大をはじめとする難関校の合格実績を追い求めがちですが、日本の高等教育全体が落ち込む中で、いつまでもその目標にとらわれていて良いのか?という疑問が浮かびます。
こういうと、それでは生徒が集まらないとか、保護者の期待が、とかいう意見が出て、それ以上突っ込んだ議論になりません。
このままでいくと、価値観のずれは次第に大きくなり、敵対したり、どちらかが無理をしたりして、職場としても良くない状況が生まれてきます。
生徒たちの自己実現をどのようにサポートしていくのかについても、一度前例やしがらみを取り払った、冷静な議論が必要でしょう。
もちろん教師同士だけでなく、生徒と議論するのも楽しそう。テーマを決めてクラスや有志で哲学対話をしてみたいと思いました。

 

学校には、これまでずっと行われてきた「仕組み」があり、また、こうすることで上手くいってきたという「成功体験」が数多くあります。

子どもたちをめぐる環境が大きく変わっていく中で、本来はそのような「仕組み」や「成功体験」を問い直していく必要があるのだろうと思いますが、実際は、話し合いの土俵にのせることすら難しいのが現状です(あまりに当たり前のことなので)。

また、日々の仕事に追われるなかで、先生同士、とくに管理職を交えて「うちの学校は何を目指しているのか?」という根っこの部分について議論する機会など、そうありません。

 

ですから、今の学校は、「仕組み」や「成功体験」のもとで、いろんな先生が自分の価値観を抑えながら仕事している状態に思えます。

 

『シン・ニホン』には様々なデータが引用されていますが、

その中からいくつか取り出して、それをもとに教科会、職員会議で議論する、

そういったことを何度かやれば、先生同士の多様な価値観が徐々に見えてくるのではないでしょうか。

 

そうやって明らかになった多様な価値観を、どう次の「仕組み」に反映させていくのかは、また次の議論になりますが…、

いずれにせよ、まずは腹を割って話し合うことからしか、新しい成功へはつながっていかないと思います。