国際バカロレアの漢字の指導について
国際バカロレアの授業について、よく漢字の指導はしないのか、といった質問を受けます。
そんなことはありません、当然漢字の指導は行います。
ですが、テストでの扱いなどは、一般的な学校と異なります。
学校によってやり方は様々でしょうが、私の知っているところでご紹介します。
インターナショナルスクールの場合、教科書がないため、漢字の学習は市販の問題集を使って行います。
範囲を決めて、授業中に小テストをやったりします。
このあたりは、他の学校と同じだと思います。
一条校でIBをやっている学校は教科書も使っています。
異なるのは評価の仕方です。
一般的には、定期考査などで漢字の問題が出され、それが点数(100点満点)に反映されます。
また、入試においても漢字の書き取りや選択問題が出題され、合否に影響してきます。
しかしIBの試験では、単純な漢字の知識を問う問題は出ません。
最終評価では、知識のあるなしだけでなく、総合的な理解やスキルを評価するように求められるからです。
(途中経過を見る形成的評価で知識テストを行うことはある)
総括的評価のための課題や、最終試験は主に論述で行われ、ルーブリックにより段階的に評価を行います。
評価基準の一つに「言語の使用」についてがあり、漢字が適切に書けているかどうかはその中で見られます。
ただし、誤字が1つあれば1点減点、といった細かい採点はしていません。トメ・ハネなどで減点、などもありません。
生徒は2時間などの決まった時間内で長い論述を書こうと必死です。ゆっくり字を書いている余裕がありません(昨日の話と逆だ…)。
「言語の使用」は漢字だけでなく、文法、句読法、文体、言葉の選択など様々な観点で評価していきます。漢字だけをことさらチェックするわけではないのです。
もちろん、あまりに悪筆であったり、誤字脱字が目立つと評価は下がりますが、
言葉の選び方が効果的で、論理的で説得力のある書き方になっていれば、多少漢字を間違えていても「言語の使用」で満点を取ることは可能です。
ワークショップなどで良く言われたのは、
どれだけ書けていないか、ではなく、どれだけ書けているか、を見てください、
ということでした。
私もついやってしまうのですが、生徒の作文を読むと、文法の誤りが漢字の間違いばかりを探してしまい、全部直したくなってしまいます。
そのような減点式の評価ではなく、ルーブリックと照らし合わせてどのくらいまで書けているかの加点式の評価をしてください、と習いました。
このような評価方法を取り入れることによって、教師は生徒に、多少間違ってもいいからどんどん新しい語彙を作文で使っていこう、と指導することができます。
また生徒の側からすれば、論述でよりよい言葉の選択ができるようにと、漢字や語句を学習するモチベーションが高まります。
たしかに漢字の誤りは目につきやすいのですが、まずは「使う」ということを優先し、教師も生徒も、もう少しおおらかにお互い付き合っていけたらなと思っています。