「差別化した指導のための具体的な方法
昨日の記事の続きです。
差別化した指導を行うための、具体的な方法についてもう少し考えてみましょう。
(1)パフォーマンス課題を取り入れる
知識ベースの課題だけを行っていては、どうしても横並びの活動になります。
年間のスケジュールの中に、定期的にパフォーマンス課題を取り入れるようにしていきます。
パフォーマンス課題の例としては、小論文、創作といった記述式の課題の他に、プレゼンテーション、スピーチなどの口述課題、グループで行うディスカッションや研究発表などがあります。
いきなりどんなスタイルでもいいとすると、生徒は混乱してしまうかもしれません。
段階的な指導が必要です。
私の場合は、学年が下のうちは課題ごとに成果物のスタイルを限定し(この単元は論述、この単元はプレゼンテーション、など)、年間の中でなるべくいろいろなスタイルに触れられるようにしています。
そして学年が上がった時に、課題に合わせて、自分でスタイルを選択するように指示します。
(2)テクストやトピックを生徒が選ぶ
教科書を使って授業をしていると、どうしてもクラス全員が同じ教材を読んで、同じ話題について考える、というスタイルになりがちです。
もちろんそのやり方も大切ですが、ときには各自で好きなテクスト、好きなトピックを選ぶようにすると、学習の幅が広がります。
ただこの場合も、いきなり好きなテクストを選んでと言っても難しいので、やはり段階的な指導が必要です。
低学年のうちは、テクストを限定し、教師の側用意した中から選択するように指示します。
少し学年が上がると、自分の好きな詩を選んで、とか、自分で短いCM動画を探してきて、といった指示に変えて、選択の幅を広げます。
高校生の後半では、各自で関心のあるジャンル、トピック、テクストをすべて自分で選択するように言います。
このようなステップを踏むことで、取り組みやすさをねらいます。
(3)問い方を変える
クラス内で、個々生徒がそれぞれのテクストやトピックについて取り組むようになる場合、従来のような問いの出し方では課題が成立しません。問い方を工夫する必要があります。
コツは、問いの抽象度を上げることです。
例えば小説についての論述の場合、
「ディオニスはなぜ『仲間にいれてほしい』と言ったのでしょうか(『走れメロス』)」といった具体的な問いについて全員に記述させるのではなく、
「物語の登場人物はどのように変化しましたか。各自が選んだテクストをもとに説明しなさい」というような、どのテクストでも記述できる抽象度の高い問いを選び、生徒に提示するようにします。
もちろん『走れメロス』で論述してもいいし、別のテクストを選んで答えてもよいようにします。
このように、問いの抽象度を上げることで、(2)で述べたような生徒が好きなテクストやトピックを選んでも、クラス全員で同じ課題に取り組めるようになります。
(4)ルーブリックによる評価を行う
以上述べてきたように、成果物のスタイル、テクストやトピック、問いの出し方まで変えるとなると、従来のような知識ベースのテストでは評価ができません。
そこで、ルーブリックを用いた段階的評価が必要になってきます。
さまざまなスタイルや問いに対応できるような、ルーブリックを事前に用意しておかなければなりません。
IBの場合は、事前に共通で使えるルーブリックが用意されており、教師はそれを使いながら課題を検討することができます。
自分で一から作るとなると、これはハードルが高いので、
上記の(1)~(3)までは行っていたとしても、なかなか評価も含めた「差別化した指導」にまでいかないのだと思います。
また、定期考査の扱いを変えるのもなかなか難しい。
私の場合は、知識ベースのテストを授業内に行い、定期考査は論述にするなど、少しずつ評価のやり方を動かしてきました。
いくら自由度の高い課題をやろうとしても、評価が伴わなければ生徒はなかなか動く気になりません(それより定期試験の準備を…となりがち)。
学校によってやりやすさ、やりにくさは異なると思いますが、評価の方法を変えていくことで、課題の内容や指導の仕方も少しずつ変わっていくと思います。