【読書】『18歳の著作権入門』論文を書く前に生徒と学びたい
先日の筑摩のセールで買ったうちの1冊です。
無自覚だった著作権
著作権について意識するようになったのは割と最近のことです。
国際バカロレアの勉強会などで、海外の学校に働く先生と一緒にお話しさせてもらったり、また、自分で本を出すようになったことで、これまでの自分の認識の甘さを思い知らされたことが度々ありました。
たとえば、ワークショップなどで、登壇者の人がスライドを使って説明している時、何の断りもないまま、聞いている方がスマホでスライドを撮ったりしていることがあります(私もよくやっていました)。
ある時の会で、隣の先生が、そいうことを平気でやっている人がどうやって子どもに著作権を教えられるのか、というようなことを話していて、私もはっとしました。
登壇者や主催者から事前に許しが出ていないのであれば、撮る前に確認しなければなりません。
その方の学校では、中高生のうちから、著作権について(発表のやり方、聞き方、論文の書き方など)を指導し、作法を身に着けさせるのだそうです。
そういう教育が不足しているのではないか、と話してくれました。
生徒と一緒に学びたい
この本では著作権に関して、
そもそも著作物とは何か、
何が認められないのか、
逆に、何は許されるのか、
など、一から丁寧に解説されており、知識を整理するのに役立ちました。
読みながら、いろいろ理解できていなかったところも見つけることができ、勉強になります。
探究活動や論文の作成などで、著作権に関する指導をしなければならない機会も多くなってきています。
課題作成にとりかかる前に、生徒と一緒にこの本を読んで、まずは生徒自身に理解してもらうことも大切でしょう。
(そうでないと、コピペレポートの指導など、もぐらたたきで大変なことになります!)
例えば、本書では「引用」について、以下の6つの注意点でまとめており、これさえ気をつけておけば大きく間違えない、としています。
①未発表の著作物は引用できない
②自分の作品との明瞭区別
③自分の作品がメイン(=主従関係)
④自分の作品との関連性
⑤改変は禁止
⑥出典の明記
これは探究ノートの裏表紙に貼り付けておきたいまとめですね。
あとは、それぞれの解説と、やり方(区別の仕方、出典の書き方など)を教え、自分で判断できるようになってほしいところです。
教室での上映会はできるのか
意外だったことは、著作権者の許可がいらない制限規定の箇所です。
著作権法によれば、
①「非営利目的であること」
②「観客などから料金を受け取らないこと」
③「実演家・口述者に報酬を支払わないこと」
この3つの条件を満たしていれば、上映会などができるそうです。
以上の条件を充たせば、権利者の意向にかかわらず上演・演奏ができます。対象は脚本や音楽だけでなく、既存の振付なども使えます。購入したDVDでも、無料の市民上映会などは基本的にできます。
この例外は、意外なほど知られていません。知らないため、権利者に断られて泣く泣くイベントをあきらめたり、あるいは広報をしないでこっそり上演・上映するケースもあるようです。
と述べられています。
私も分かっていませんでした。
授業内で、教育目的で使用するのはOKだということは分かっていたのですが、放課後に生徒を集めて映画の上映会をする、などの活動もやってよいことになります。
まぁ、今までまったくやっていなかったかと言われれば、そうでもないのですが…
これまでは、何とか授業と関連付けて、理由をつけて見せていましたが、内心は大丈夫かなぁと気になっていました。その心配はいらなかったのですね。
DVDの最初の注意書きには、家庭以外での上映は法律で禁止されています、などと表示されます。
販売元としては、あまり大っぴらに上映会をされても困るので、そう書かざるを得ないということなのでしょうか。このあたりはまだよく分かりません。
(ただ、最初に生徒に著作権の説明をしないで上映会をしたら、この先生は法律を破っているのではないかと誤解される恐れがあります)
また、TSUTAYAなどで借りたDVDだとどうなのか、という問題もあります。
この本には借りたDVDのケースは書かれていなかったのですが、ウェブでいくつか見た限りでは、意見が分かれていますね。
これも制限規定により、個人が罰せられることはない、という意見がある一方で、
「頒布権(著作権とは別)」の侵害にあたる可能性があるので、貸出元に確認した方がいいという記事もありました(貸出元が許可するとは思えないですね)。
こちらもいま一つ判然としません。
教育にICTが用いられることで、教科書や学校で購入している副教材以外の著作物を使う機会がどんどん増えてきています。
また、グレーゾーンのケースも今後どんどん出てくるでしょう(オンライン授業での教材の配信はどこまで可能なのか、など)。
まずは入門書で基礎をかためつつ、悩ましい問題はその都度生徒と一緒に考えられるようになっていきたいと思いました。