Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

本のタイトルを決める~『ラクイチ授業プラン』ができるまで⑦

(前回までのあらすじ)

急な授業代行や授業準備の時間が取れなかったとき、1時間完結ですぐに実践ができ、かつ楽しい授業プランを集めた本を作る。

本のコンセプトがかたまり、ページのフォーマットができ、執筆メンバーも集まりました。

 

授業実践を持ち寄る

月に1回程度のミーティングとし、まずは使えそうな授業プランをみんなで持ち寄ることにしました。

目標の掲載数は50本。

見開きで1つの授業プランが載っていて、全体で120ページほどのイメージです。

 

最初の勢いはよかったのですが、いざやってみると大変でした。

というのも、持ち寄った授業アイデアをすべて載せられるわけではない。

 

ミニネタとしては面白いんだけど、明らかに1時間もちそうにない。

また、凝りすぎていて1時間では終わらない。

勉強にはなるが、単なる学習プリントのようであまり楽しそうではない。

著作権的にまずい(著作権に関しては後日書きます)。

などなど、自分で決めたコンセプトではあるのですが、そのしばりに合致せず、ボツになっていく授業アイデアが続出します。

そして、結果としてこの作業は校正ぎりぎりまで続くことになるのでした。

最終的に、50本の授業プランを載せたのですが、30本以上不採用になったものもあります。

 

授業実践本のタイトルについて

この段階では、まだ本のタイトルは決まっていませんでした。

編集者さんからは、何かいいタイトルを考えておいてくださいね、とは言われていたのですが、なかなかそれが難しく。

 

ちなみに最初に企画書を書いた段階で、自分の考えた仮タイトルが「急場をしのぐ授業案」という意味をこめた「しのぎ案」でした。

編集者さんから、さすがにこれはちょっと…ということですぐに却下されましたが。

 

授業実践本のタイトルって、ストレートな名前が多いような気がします。

「子どもがどんどん自分から発言するようになる! 中学国語 授業アイデア50」のような(これはいま私が適当に考えたものです)。

実際に、編集者さんからもこれに近いようなタイトル案を提案されました。

 

余談ですが、なぜタイトルが長くなる傾向にあるのか、編集者さんからその理由を聞いたことがあります。

原因は、ネット販売が広まったからです。

Amazonなどで表紙の画像を見て買うかどうかを決める人が多いため、表紙やタイトルになるべくいろんな情報を盛り込むようになっていったそうです。

授業実践本は、校種や教科によって買う人が限定されます。

その人たちの手がちゃんと動くように、「中学」「国語」と載せる必要があるとのことでした。

 

本のタイトルを決める

ただ、自分としてはもっとキャッチーな名前にできないかなと考えていました。

「1時間で完結する」「準備が不要」「誰でも実践できる」授業という、大げさに言えば新しいカテゴリーに名前をつけるようなことはできないかなと、いろいろ思いめぐらせていました。

 

そんな中、前任校で仲良くしてもらっていた1つ上の先輩と飲む機会がありました。

その先生は日本史が専門です。

「今こんなことやってるんです」「何かいいタイトルないですかね~」なんて話してみたところ、

「『ラクイチ』なんてどう? 楽に1時間でできる授業だし」というアイデアをいただきました。

楽市楽座からとったんですね。

もう最初に聞いたとき、ぴったりだと思いました。

「ちょっと『ラクイチ』の本貸して」とか「次の時間『ラクイチ』から何かやってみようかな」というように、職員室での使われ方まですぐに想像できました。

カテゴリー化としてもばっちりです。

「それいいですね!」と、自分の中ではもうそれしかないくらいに気に入りました。

 

その先生には、その後『中学社会 ラクイチ授業プラン』の執筆代表をお願いすることになります。

 

「指導案」にはしたくない

ラクイチ」の後をどうするか。

授業実践本といっても、いろいろなタイトルのつけ方があります。

指導案、授業案、実践事例集、授業アイデア

はじめから「指導案」にはしたくないなと思っていました。

研究紀要の場合などは指導案でも良いと思いますが、「指導」という言葉に教師主導の重たいイメージがつきまといます。

フォーマットづくりの時に意識したように、むしろ既存の指導案のフォーマットは避け、実践のハードルをなるべく下げることに気を配っています。

いろいろな組み合わせを試してみましたが、カタカナ中心の方が若手の先生に手に取ってもらいやすいかなと、「授業プラン」でいくことにしました。

 

ラクイチ授業プラン」タイトルの完成です!

 

実際には、この後編集者さんとのやり取りがもう少しあります。

編集者さんの希望としては、「中学国語 ラクイチ授業プラン」だけだと、どういう本かよく分からないから、もっと分かりやすいタイトルが良い、ということでした。

自分としては「ラクイチ」のネーミングを外したくなかったので、折衷案としてタイトルの前に文言を足すことにしました。

ラクに楽しく1時間」というフレーズです。

こういうふうにコンセプトを示しておけば、どういう本かも伝わるのではないかという狙いです。(音を7・5にして読んだときのリズムも意識しました)

 

最終的に、本のタイトルは「ラクに楽しく1時間 中学国語 ラクイチ授業プラン」に決まりました。

 

結果的に、このタイトルにして良かったと思っています。

発売後、知り合いの先生方から「『ラクイチ』読んだよ」とか、同僚からも「『ラクイチ』授業で使ってみました」とか、

編集者さんとのミーティングでも「次の『ラクイチ』どうしましょうか」のように、とっても使い勝手がいい名前です。

「しのぎ案」にしなくて良かった(笑)

タイトル一つにこだわる、いい経験になりました!