先行実践の著作権について~『ラクイチ授業プランができるまで』⑨
前回の記事では、公表された著作物や生徒の成果物の扱いについてまとめました。
一番難しいのは、先行実践の扱いです。
先行実践の著作権についてはどう考えればいいのか、まとめてみたいと思います。
全くのオリジナルはあるか
普段から、全くのオリジナルで授業をすることなど、そうそうありません。
多くの実践本が出ていますし、ウェブ上でも様々な実践が公開されています。
また、同僚の行っている実践を参考にするケースもあります。
それらを時にはそのまま使ったり(追試)、アレンジを加えたりしながら、自分の授業を組み立てていきます。
どこまでを自分のオリジナルの授業と言ってよいのか、その線引きは難しいところです。
実践を本に載せたい場合は、このあたりを慎重に考えなければなりません。
(1)先行実践をそのまま使いたい
著作物やウェブサイトなどで公表されている他者の先行実践を、そのまま自分の本に使いたいというケースです。
この場合は、もちろん勝手に載せてはいけません。
実践考案者の方に直接確認をとる必要があります。
本のコンセプトを説明し、許可を得てはじめて掲載可能になります。
ただし、すでに著作物として出版されている場合、利益が競合することになるため、許可を得ることは難しいのではないかと思います。(出版社同士の話し合いになることもあります)
もちろん、許可を得たとしても、載せる際には実践考案者の方のお名前や、出典を載せることが必須です。
自分の実践だと読者に誤解されるような書き方になってはいけません。
(2)アレンジした内容を載せたい
ある先行実践をふまえつつ、アレンジした実践を載せたい場合です。
この場合は、どの程度アレンジが加わっているかによって対応が変わります。
少しのアレンジを加えただけで、授業アイデアの大部分(とくに授業の核になる部分)が変わっていないのであれば、それは(1)と同じとみなし対応する必要があるでしょう。
一方で、先行実践から発想のヒントは得つつも、そこから自分なりのオリジナリティを加えた実践であれば、それは自分の実践といってよいと思います。
特別許可をとる必要はありませんが、誰の何を参考にしたのか書いておくのが礼儀です。
迷うような場合は、許諾の確認をとっておくと確実です。
(3)誰が最初に考案したのかがわからない実践
いわゆる「定番」というやつですね。
あまり定番ばかり載せては、新たに本を作る意味はないのですが、時には定番のものでも載せたいということがあります。
今回の本づくりでは、特定のグループでよく行われているもの(TOSSの、口に二画足す、のような)は載せないようにしました。
一方で、いろいろなところで実践されていて、誰が最初に考案したのかわからないものついては、自分の知る範囲で一番参考にした書籍やウェブサイトの情報を載せることで対応しました。
『ラクイチ国語』で言えば、故事成語を4コマ漫画で表現する、など授業プランがそれにあたります。
気をつけるポイント
今回の本づくりで気をつけたのは以下の点です。
①先行実践者のアイデアを、自分たちのアイデアのように表現していないか
②先に発売された著作物の利益を侵害していないか
③参考にさせていただいた先生方に失礼にあたっていないか
④先行実践や参考文献の出典が正確に記されているか
教育実践の著作権については、議論の余地があるところだと思いますが、このようなことに注意していけば、大きく間違うことはないと思います。