本がつなぐ縁、広野先生のこと~『ラクイチ授業プラン』ができるまで⑩
授業実践本『ラクイチ授業プラン』を作るにあたり、これまでに出版された類書を買い集め、研究をしました。
そんな中、Amazonですごい本を見つけました。
広野昭甫『学習意欲を高める ことば遊びの指導』(教育出版、1982年)です。
著者の広野先生は、長年中学校で国語を教えてこられた先生です。
この本には、先生が作ってこられた教材、授業アイデアがたくさん詰まっています。
目次から適当に拾ってみても、
画数迷路、漢字のしりとり、誤字探しクイズ、四字熟語宝探し、ことわざのパロディー、数詞かるた、品詞パズル・・・、盛りだくさんです。
そしてどれも面白い。
どの教材を見ても、中学生が楽しみならが言葉を身に着けていってほしいという、広野先生の思いが伝わってきます。
「自分が『ラクイチ』でやりたかったことはこれだ! それがもう30年も前に出版されている!」と、感銘を受けました。
ちなみに、続編も出ています。
ぜひ広野先生のご実践を本に載せたいと思い、出版社を通して連絡をとっていただきました。
そして、掲載の許諾をいただくため、直接お電話を差し上げることになりました。
先生の本に感銘を受けたこと、これから本を作ろうとしていること、本のコンセプトなど、緊張してまとまりのない話をしてしまいましたが、
突然のお願いにもかかわらず先生は、「国語教育のためになるなら、ぜひお使いください」と快諾してくださいました。
『ラクイチ授業プラン』の中では、広野先生のご実践をもとにして、「助詞の世界」(キーワードを決め、いろんな助詞を使いながら文を作る)、「品詞がヒント」(品詞ごとにヒントを出して、キーワードを当てるゲーム)の2本を掲載しています。
以下、後日談です。
本が完成した後、広野先生のところへ完成のご報告とご挨拶にうかがいました。
ご高齢ということもあり、その時は入院なさっていたのですが、話しに来てくれて構わないということでしたので、お言葉に甘えました(どうしても直接お会いしたかったのです)。
完成した本を見ていただき、また、どのようにしてあの膨大な実践を生み出したのか、などについてもお話をうかがうことができました。
「好きだからですよ」と先生は事もなげにおっしゃいます。
言葉が好きで、生徒には楽しく学んでほしい、その思いでずっとやってきただけだ、と。
隣にいた奥様も「家でもずっとこんなことばかりやっているんですよ」と笑っていらっしゃいました。
聞けば、病室でも看護師さんの名前で折句を作ってはプレゼントしたりしているそうです。
そのお話を伺ったとき、先生は本当に言葉遊びが好きで、その情熱をずっと持ち続けていらっしゃるのだなぁと、いたく感動したのを覚えています。
今回の経験で、本として形にすることの意味をあらためて思いました。
本にして残すことで、何十年かあとにふと誰かの目にとまるかもしれない。そしてそれが次の世代の役にたつかもしれない。
これはインターネットではできないことです。
病院からの帰りしな、奥様から「若い人に自分の本を読んでもらって、本人も喜んでいました」と、逆に感謝をされてしまいました。
自分の作った本は何年かしたら埋もれてしまいますが、何十年かあとに誰かが偶然見つけてくれて、そのことで自分に連絡がきたらどれほどうれしいか。
帰り道、そんなことをぼんやり考えて楽しくなりました。
広野先生からいただいたサイン「ことば―この泉のごとき対象」