Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

【読書】『石川九楊の書道入門』書写の授業に活かしたい

書道を習い始めて、もう9年になるのですが、上達への道はまだまだ遠いです。
この夏、どうせどこにも出かけないので、少し時間をかけて学び直してみようかと思いました。

 

その参加にと買ったのが、『石川九楊の書道入門 石川メソッドで30日基本完全マスター』(芸術新聞社、2007年)です。

 

 

 


石川氏は「筆触」という概念を用いて、書を分析し論じることで知られています。

本書でもそのアプローチが活かされ、他の入門書にはないさまざまな工夫がありました。

だいたい、書の書き方を本で説明するのは至難の技です。

穂先の動かし方、筆の沈み具合、スピード、微妙なさじ加減が要求されます。

そして、多くのメソッド本は、お手本と、書き方のコツを言葉で説明するものがほとんどです。

 

石川氏は、横画や縦画などの漢字の点画、部首が、英語でいうとアルファベットに当たるとし、アルファベットを知らないと英単語が書けないように、点画の書法を学ばなければ漢字が書けないと述べます。

 

そして、ここからがすごいのですが(そして文章だと分かりづらいのでぜひ本書にあたってほしいのですが)、点画を書き方を5つの視点から分析し、言語化、視覚化しています。

「骨格イメージ」筆の動かし方の基本ライン

「肉付イメージ」穂先や胴の動かし方

「筆圧イメージ」筆圧の深い、浅いをグラフ化

「速度イメージ」速度の緩急をグラフ化

「思想」どういう心持ちで筆を操作するのかを言語化

 

横画一本にここまで詳しく説明した本は、今まで読んだことがありません。

(30日のうちの、1日目は横画だけで終わります)

小中学校では書写の授業がありますが、なかなかここまで点画の書き方を詳しく教えることは少ないだろうと思います。

その結果、どうやって書けばお手本に近づけるのかが分からなくなり、書道が嫌いになっていく、ということもありそうです。

 

『14歳からの読解力教室』でも述べられていましたが、教師はこれくらい言えば分かるだろうと思いやすく、実は子どもにはほとんど伝わっていない、ということがよくあります。

書写に関しても、もっと理屈から説明していくと伝わることもあるのではないかと思いました。

(そして動画を使えば、もっと伝わりやすくなりそうですね。)

ただ、本書は「入門」といいつつ、少々ハードルが高いです。

例えば、筆者は墨汁を使うことを否定します。

「液体墨や墨汁は、基本的には使ってはいけません。墨をするのが面倒だとか、時間がないときう人は、書をやめたほうがよいでしょう。」

と、のっけから全否定です。

「(墨を)する時間の目安としては三十分以上です。少し長いと思われるかもしれませんが、驚かないでください。書にはゆったりとした時間が必要なのです。墨をするのがめんどうくさいと思っている間は、書はまだまだだめだと考えてまちがいありません。」

普段墨汁ばかり使っている私には、耳の痛い言葉が続きます。

 

なかなかそんなに時間とれないし…と言い訳をしつつ、この本を参考にして、自分の癖や苦手なところを見直していきたいです。