【読書】オススメ!書道の練習本
先日は『石川九楊の書道入門』を紹介しました。
今回はそれ以外に、私が普段自宅での練習に愛用している本を紹介します。
幕田魁心『極める!楷書 創作へのみちしるべ』(木耳社)
まずは、私の師匠・幕田魁心の本を挙げないわけにはいきません。
この本では、「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」「雁塔聖教序」といった楷書の古典を取り上げ、作品ごとにその書法、用筆の特徴を解説していきます。
それぞれに手本がついているので、解説を読みながら臨書することで、古典の書風を身に着けることができます。
これは私の通っている書道教室の基本テキストなのですが、独学でも十分取り組めるだろうと思います。
筒井茂徳『楷書がうまくなる本』(二玄社)
この本はすごいです。
先程も挙げた「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」などの古典をもとにしているのは同じなのですが、それらを正確に臨書するために、筆の使い方をミリ単位で分析し、解説していきます。
例えば、漢字の縦画ひとつにしても、
鉄柱勢(収筆部で強く押し返す)
垂露勢(静かに止める)
懸針勢(下方に引き抜く)
この3種類をまず挙げ(ここまでであれば詳しい練習本には載っているのですが)それ以外にも
ほぼ寸胴に作る縦画
下方を細めに作る縦画
下方を太くする縦画
中ほどを引き締める長い縦画
下方を太くしてゆく長い縦画
という具合に区分し、それぞれに実例を挙げていきます。
正確に臨書するためには、これくらい注意せよ、ということです。
タイトルからハウツー本のようなものを想定して読むと、面食らうと思います。
それくらい本格派です。
この本を読むと、漢字を美しく見せる原理というものが理屈でわかってきます。
その意味で、書道をされない方でも、漢字に興味があるのであれば読み物として楽しめると思います。
この本で理屈を学び、見るべきポイントをつかんだあとで、二玄社の中国法書選シリーズなどで練習すると効果的です。
山下静雨『見違えるほどきれいな字が書ける本』(KKベストセラーズ)
もっと気軽に、短い時間で上手くなりたい、という方にはこの新書がオススメです。
目次の初めのほうにある「きれいに見える字が超カンタンに書ける12のオキテ」の部分だけでも意識して書くようすれば、ずいぶん変わると思います。
「縦書きはピシッと行の中心を通す」「右肩が上がりすぎた字は見る人を疲れさせる」「力を入れても強い字にはならない」などの具体的なアドバイスが並びます。
過去記事でも紹介しています。
根本知『美文字の法則 さっと書く一枚の手紙』(さくら舎)
最近では、手書きで手紙を書くなんていう機会はめったになくなりました。
たまにそういう機会があると、どう書いていいか慌てますよね。
書きづらい理由の一つに、前書き、とくに時候のあいさつがあります。
どう書いていいかわからず、結局文例集やインターネットの丸写しになったりします。
この本では、手紙をもっと気軽に書いてほしいという思いから、時候のあいさつは季節を表す熟語を書くようにしてはどうか、という提案がされています。
夏であれば「拝啓 夏日清風来(かじつせいふうらい)」という書き出して済ませよう、という提案です。
このアイデアは新鮮でした。
たしかに、前書きをどうするかという問題が一気に解決するばかりでなく、「こなれた」感じもします。
この本には、他にもいろんな実例が載っているので、一冊持っておくと、何かあったときにちょっと手書きで書いてみようかな、という気分になれて、オススメです。