Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

【読書】オススメ!書道の練習本

先日は『石川九楊の書道入門』を紹介しました。

今回はそれ以外に、私が普段自宅での練習に愛用している本を紹介します。

 

幕田魁心『極める!楷書 創作へのみちしるべ』(木耳社)

極める!楷書―創作へのみちしるべ

極める!楷書―創作へのみちしるべ

  • 作者:幕田 魁心
  • 発売日: 2001/01/01
  • メディア: 大型本
 

 まずは、私の師匠・幕田魁心の本を挙げないわけにはいきません。

この本では、「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」「雁塔聖教序」といった楷書の古典を取り上げ、作品ごとにその書法、用筆の特徴を解説していきます。

それぞれに手本がついているので、解説を読みながら臨書することで、古典の書風を身に着けることができます。

これは私の通っている書道教室の基本テキストなのですが、独学でも十分取り組めるだろうと思います。

 

筒井茂徳『楷書がうまくなる本』(二玄社

楷書がうまくなる本

楷書がうまくなる本

  • 作者:筒井 茂徳
  • 発売日: 2003/03/01
  • メディア: 単行本
 

この本はすごいです。

先程も挙げた「孔子廟堂碑」「九成宮醴泉銘」などの古典をもとにしているのは同じなのですが、それらを正確に臨書するために、筆の使い方をミリ単位で分析し、解説していきます。

例えば、漢字の縦画ひとつにしても、

鉄柱勢(収筆部で強く押し返す)

垂露勢(静かに止める)

懸針勢(下方に引き抜く)

この3種類をまず挙げ(ここまでであれば詳しい練習本には載っているのですが)それ以外にも

ほぼ寸胴に作る縦画

下方を細めに作る縦画

下方を太くする縦画

中ほどを引き締める長い縦画

下方を太くしてゆく長い縦画

という具合に区分し、それぞれに実例を挙げていきます。

正確に臨書するためには、これくらい注意せよ、ということです。

タイトルからハウツー本のようなものを想定して読むと、面食らうと思います。

それくらい本格派です。

 

この本を読むと、漢字を美しく見せる原理というものが理屈でわかってきます。

その意味で、書道をされない方でも、漢字に興味があるのであれば読み物として楽しめると思います。

 

この本で理屈を学び、見るべきポイントをつかんだあとで、二玄社の中国法書選シリーズなどで練習すると効果的です。

九成宮醴泉銘[唐・欧陽詢/楷書] (中国法書選 31)

九成宮醴泉銘[唐・欧陽詢/楷書] (中国法書選 31)

  • 作者:欧陽 詢
  • 発売日: 1987/11/10
  • メディア: 大型本
 

 

山下静雨『見違えるほどきれいな字が書ける本』(KKベストセラーズ

見違えるほどきれいな字が書ける本 (ベスト新書)

見違えるほどきれいな字が書ける本 (ベスト新書)

  • 作者:山下 静雨
  • 発売日: 2007/06/09
  • メディア: 新書
 

 もっと気軽に、短い時間で上手くなりたい、という方にはこの新書がオススメです。

目次の初めのほうにある「きれいに見える字が超カンタンに書ける12のオキテ」の部分だけでも意識して書くようすれば、ずいぶん変わると思います。

「縦書きはピシッと行の中心を通す」「右肩が上がりすぎた字は見る人を疲れさせる」「力を入れても強い字にはならない」などの具体的なアドバイスが並びます。

過去記事でも紹介しています。

senobi.hateblo.jp

 

根本知『美文字の法則 さっと書く一枚の手紙』(さくら舎)

美文字の法則 さっと書く一枚の手紙 ―ボールペン・万年筆・毛筆

美文字の法則 さっと書く一枚の手紙 ―ボールペン・万年筆・毛筆

  • 作者:根本 知
  • 発売日: 2017/06/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

最近では、手書きで手紙を書くなんていう機会はめったになくなりました。

たまにそういう機会があると、どう書いていいか慌てますよね。

 

書きづらい理由の一つに、前書き、とくに時候のあいさつがあります。

どう書いていいかわからず、結局文例集やインターネットの丸写しになったりします。

 

この本では、手紙をもっと気軽に書いてほしいという思いから、時候のあいさつは季節を表す熟語を書くようにしてはどうか、という提案がされています。

夏であれば「拝啓 夏日清風来(かじつせいふうらい)」という書き出して済ませよう、という提案です。

このアイデアは新鮮でした。

たしかに、前書きをどうするかという問題が一気に解決するばかりでなく、「こなれた」感じもします。

 

この本には、他にもいろんな実例が載っているので、一冊持っておくと、何かあったときにちょっと手書きで書いてみようかな、という気分になれて、オススメです。