働き方改革と、教師の孤立化
内田良先生の、教師の働き方改革オンラインイベントに参加しました。
コロナの影響でこの夏どこにも出かけていませんが、こうしてオンラインで気軽に学べるイベントがたくさんあって、ありがたいです。
ゲストはたかまつななさん、聞き手は斉藤ひでみ先生でした。
私自身、20代の頃に無茶な働き方をして体を壊してしまった経験があるので、この問題には大いに関心があります。
20代の頃、仕事のペースや力の入れどころが分かっていなかった、ということもありますが、放課後は部活をして、その後に担任業務やプリントチェック、それが終わってからようやく明日の授業の準備をし始める、というサイクルが常態化していました。
これに行事の準備が加わったときにはもう大変で、家に帰るのが深夜になる、ということもよくありました。
ただ、やっているその時は「楽しかった」んですね。
新しい学校で、若い先生も多く、自分たちが学校を作っているんだ、という気持ちが強くありました。
どうやったら行事が盛り上がるかとか、どういう単元を作るか、なんてことを遅くまで議論していました。
そういう働き方はやはり無理があったようで、ある時一気に身体を壊し、休まざるを得ない状態にまでなってしまいました。
このこともあり、30を過ぎてからは働き方を大幅に見直して、定時退勤を意識するようになりました。
また、学校の構造的な問題にも関心が向いて、本やイベントを通して学んでいます。
今回もイベントでも、いろいろなヒントをいただきました。
たかまつさんの、教師の働き方改革のムーブメントはもう終わっている、中央メディアはどこも注目していない、という話は衝撃的でした。
たしかに言われてみると、私の学校でも数年前から「働き方改革!」という掛け声のもと、いろいろな取り組みがなされましたが、十分に達成されたかというと、まだまだ改善の余地はたくさんあります。
しかし、何年かやるうちに、だんだんとその声のトーンが下がってきたように思います。(今回のコロナ対応で、すっかり影を潜めました)
内田先生の発表の中では、
教師になりたい人が減っているが、教師という仕事の魅力をアピールしていく必要はない、それは十分に伝わっている。それよりも、単純にマイナスを減らせばいいだけだ。
という話が印象的でした。
私もときどき大学生から相談を受けますが、決まって言われるのが「学校って大変ですよね?」という質問です。
教育には携わりたいけれど、学校に勤めることにはためらいがある、そんな悩みをよく聞きます。
せっかくやる気があって優秀な若い人たちを、そうやってしり込みさせてしまうのはもったいない。
自治体や、私立であれば学校単位で、思い切ったホワイト化を打ち出してアピールすれば、それだけでもいい人が集まると思うのですが。
働き方改革と関連して、最近気になるのが「先生たちの孤立化」です。
学校によって状況は大きく異なるでしょうけれど、
職員会議や教科会議、学年会議が伝達だけの場になっていたり、仕事に追われて休み時間や放課後も同僚と話す機会が極端に少なかったり、そういうことが年々ひどくなっている気がします。
また、ICTの利用が進むことで、それに拍車がかかります。
会議や朝のミーティングでひたすらPCの画面しか見ない、仕事の依頼が次々メールで舞い込んでくる…どんどん仕事の形態がそのようになってきます。
確かに効率的ではあるのですが、私はどうもそういう働き方が苦手なようです。
それと同時に、職場の同僚と意見をぶつけ合ったり、相談したり、みんなで何かを作る、という機会も少なくなっているのではないでしょうか。
そもそもなぜ教師になろうと思ったのか、学校でどんなことをしたいのか、授業で何を目指しているのか、そういった根っこの部分を共有するような時間。
愚痴を言ったり、悩んでいること、困っていることをふと漏らすような時間。
そういった時間が失われると、なんとなく一人でずっと仕事をしているような感覚に陥ります。
昨日のイベントでは、たかまつさんの発案による「先生死ぬかも」のツイートがトレンド入りするなど、話題になりました。
読んでいて辛い、ますます教員志望者が少なくなる、などのコメントもありましたが、私としては、それだけ自分が抱えている辛さを言える場が少ないのかなと感じました。
一時的であれ、思ってることが言えて、同じようなことを考えている人とつながれるのは良いことのように思います。
20代の頃に、自分が夜まで仕事をしていて「楽しかった」のは、同期や周りの先生方と一緒に残って、そういう時間が共有できていたからだと思います。
確かに、仕事をしている充実感や達成感がありました。
でもそれは夜中にやるのではなく、勤務時間内にやることですよね。
若い先生が、やりがいや達成感を「勤務時間内で」十分に味わえるように、
会議のあり方、授業準備のあり方など、学校の仕組みを工夫していくのは、自分たちのような中堅の役割なのかなあと考えています。