Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

今週の名文(4)

おもしろくないわけがないよ。真っ白い紙を好きなだけ墨で汚していいんだよ。どんなに失敗してもいい。失敗することだって当たり前のように許されたら、おもしろいだろ?

砥上裕將『線は、僕を描く』より


水墨画をモチーフにした小説。

初めて水墨画を習った主人公。師匠のお手本どおりに描こうとするがうまくいかない。

師匠は気にしないでどんどん描くように促す。そのうちに、どうせ失敗するんだからと気が楽になり、紙をひたすら墨で汚すのが楽しくなってくる。

失敗したらどうしようとか、人によく見せようという気持ちを忘れ、ただ純粋に楽しむこと。

 


あなた方の方法は飛行機で一気に目的地に向かい

彼らの方法はジープで山道を進むように曲がりくねりながら向かいます

日本人には拙速に変えるより段階的に変える方法が合っています

白洲次郎NHK知恵泉」より)


GHQから憲法草案を提示されて、白洲次郎が反対する返事に送った言葉。

教育を変えるのも同じかな、などと考えた。



「いらっしゃいませ!」

私はさっきと同じトーンで声をはりあげて会釈をし、かごを受け取った。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としてのわたしが、この日、確かに誕生したのだった。

村田沙耶香コンビニ人間


IBの授業で、『コンビニ人間』を取り上げ、生徒と読んでいる。

主人公の人物造形、コンビニ店員になることで社会の一員になれたという感覚は、生徒も面白く読んでいた。

「モダンタイムス」との比較などをしてみると面白そう。