Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

ワークショップ授業で感じる問題点

前回は、ワークショップの授業で得た変化について書きました。

 
今日は、授業を通して感じた問題点について書きます。
問題点といっても、今の自分が抱えている問題、という意味です。ワークショップ授業そのものを批判するものではありません。
 
(1)精読への橋渡し
 
ワークショップを通して、読書への関心や、文章を書くことに対する意欲は高まってきたように感じています。
ただ、精読となると話は別で、高校一年生のクラスでは、国語総合の教科書を読んで理解するのが難しい状況です。
 
多読を続けていくのか、どこかで精読型の授業にシフトチェンジしていった方のいいのか、よく分かりません。
 
来年度以降は「大学入試に出るから」という理由をつけて、問題演習に取り組ませていくようになるだろうと考えています。
 
(2)課題のレベル設定
 
ライティングワークショップや、プロジェクト型の授業では、どういう問題を出して、どのレベルの課題に取り組ませたら良いのか、うまくつかめません。
 
これまでは教科書中心の授業をしていたため、テキスト内容を理解できているかどうか、というのが達成のための指標でした。(その分、自由度の高い課題は出すだけで済ませられていました)
 
今は、生徒が一人一人取り組む課題が評価の中心です。
テーマを決めるだけで何時間もかかる生徒がいる一方で、1000字程度を素早く書いてしまう生徒もいます。
400字の文章を書くのがやっとの生徒がいますし、本来はもっと書ける力を持っているのに、だらだらと取り組んで、ほとんど書いていない生徒もいます。
 
今は、いろんなテーマで書けるような、幅の広い問いを出すことで、生徒が自分なりに挑戦できるようにしています。
あとは個別対応。だけどどこまでフォローし、促せているか…。
 
(3)成長が客観的に説明しづらい
 
ワークショップの授業をやっていると(IBの授業もそうですが)、ルーブリックを用いたパフォーマンス評価など、これまでの評価の仕方とはずいぶん観点が変わります。
主観的には、どんどん変化しているなぁ、成長しているなぁ、と思えるんです。
でも、なかなかそれが他者に伝わりません。
 
勤務校では、よく外部の実力試験を全員に受けさせて、生徒のレベルを見ています。
ただ、ワークショップやIB課題をやっていても、実力試験で好成績をとることに直結はしません。
そのことで、保護者は心配になりますし、その心配は生徒にも影響します。
他の先生に「こんなんで大学入試は大丈夫?」と言われると、こっちも自信をもって大丈夫とは言えないところが辛い。
 
もちろん、進学をサポートするのも大事な役目です。ただ、実力試験のために授業を設計するのは本末転倒ですし、どうバランスをとっていくのが良いのか、悩んでいます。
 
(4)古典の学習
 
IBの概念ベースの授業づくりや、プロジェクト型にすることで、これまでとは異なる古典の単元を設計することは可能と思います。
ただ、そうすると(3)と似てくるのですが、外部の実力試験や大学入試との兼ね合いをどうするかが問題となってきます。
特に高校一年生の外部テストでは、レベルが上がるほど知識的な先取りが要求されてきます。
 
ただでさえギチギチのカリキュラムの中で、新しいことを始めるためには、これまでの何かを削らなければなりません。
ただ、何を削ればいいのか。
そのコンセンサスは、勤務校ではまだ取れていません。
 
どのタイミングでどのようなことに取り組ませていくか、そして進路選択と、国語科としての生徒の成長をどう結びつけていくか。
この辺りの見通しの立たなさが、今抱えている問題点です。