【読書】『西洋美術史入門』国語の授業でも使えるアイデア
先日の筑摩書房のセールで買った本を次々読んでいるわけですが、
池上英洋『西洋美術史入門』(ちくまプリマ―新書)も、生徒に進めたくなる一冊でした。
私も作品についての知識はいくらかもっていますが、
その作品がなぜ価値があるのか、またどのような社会的文脈のもとに描かれたのか、とったところまではよくわかっていませんでした(『教養の書』でいう「クイズ的な知識」止まり)。
この本では、作品の鑑賞方法だけにとどまらず、美術史の中での位置づけや、社会のニーズがどこにあったのか、といった観点から作品を読み解きます。
そのため、より広い視点から美術をとらえることができます。
例えばミレーの〈落穂拾い〉について。
この絵の主題は、のどかな農村風景にあるのではなく、広大な農地を管理する大地主と、集め洩らした穂を拾う貧しい農民の階級差である、
そして当時「貧しい貧困層」の主題が求められたのは、富裕層が慈善行為をアピールする目的があった(死後の救済につながる)、
とかいう説明を読むと、自分がいかに近代以降の、作品は作者の自己表現で、絵の鑑賞は趣味で行うものだ、という価値観で見ているのかがよく分かります。
この本では、絵の「読み方」がいろいろ登場します。
本書の最初に紹介される絵の読み解きの基本は、国語の授業でやっても面白いなと思いました。
一つは「スケッチ・スキル」
ある作品をみながら、それをノートにスケッチする活動で、絵を見て短時間で小さな略図に直す活動だそうです。
そして、特徴的な色づかいやモチーフなど、気づいたことを情報として言語化して書き込んでいきます。
国際バカロレア(IB)の課題では、広告ポスターや写真の分析などを行うことがあります。
また、視覚教材は国語の授業でもこれからもっと使われるようになってくるでしょう。
視覚教材の分析の前段階として、この「スケッチ・スキル」を取り入れた活動は試してみたいなと思いました。
もう一つは「ディスクリプション・スキル」
「視覚情報を言語情報に変換すること」です。
生徒は二人組になり、片方は机に頭を伏せておく。
片方の生徒にモニターで図を見せる。
図を見た生徒は、文章だけでその図を説明する。
文章が書けたら、ペアの生徒に見せて、文章から図を再現してもらう。
という課題。
図を変えたり、何度かトライしていくことで、徐々に上達していくのだそうです。
これらは美術作品を「読む」ための基礎的なトレーニングなのだそうですが、国語の授業にも共通するところがありますね。
ゲーム感覚で取り入れてみたいと思いました。