Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。IB=国際バカロレア、RW=Reading Workshop、WW=Writing Workshop、P4C=子どものための哲学

「差別化した指導」を取り入れよう

誰も置いていくことなく、教室で探究的な学びを行う。

難しいことですが、これを実行するために有効な方法があります。「差別化」です。

(英語では「differentiation」で、IBのガイドブックでは「差別化」の訳があてられています。私は「個に応じた」という方がしっくりくるので、そちらを使う時もあります。この記事では「差別化」で統一します)

 

私は、数年前に国際バカロレア(IB)のプログラムについて学んだとき、はじめてこの考え方を知りました。

「差別化した指導」とは、生徒一人一人の能力や特性に合わせ、学習方法、成果物のスタイル、教材選びに合理的な配慮を行う、というものです。

 

IBのガイドブックには、指導と学習に関して以下の6つの原則が掲げられています。

・探究に基づいている。

・概念理解の発達を重視する。

・地域的・グローバルな文脈において展開する。

・効果的なチームワークと協働に焦点を置く。

・すべての学習者のニーズを満たすために学習を差別化する。

・評価によって報告する(形成的評価と総括的評価)

 (『MYP 原則から実践へ』p.78)

どれも興味深いのですが、今回注目してほしいのは5番目です。

「すべての学習者のニーズを満たすために学習を差別化する。」という原則が最初にはっきりと述べられており、IBで教える場合はこのことを常に意識しておかなければなりません。

 

ガイドブックではさらに「差別化した指導」の具体的な内容が示されます。

少し長い引用になりますが、ぜひ読んでみてください。

 指導を差別化する(多様な生徒のニーズを満たすよう指導方法を修正する)ことによって、生徒が適切な学習目標を個別に設定し、到達を目指すための機会をつくります。教師は、個々の学習ニーズを満たすための教育方法を考慮する際、各生徒の言語的側面にも配慮してください。(略)

 教師は、作品サンプルや課題ごとの評価規準の説明などの例を示したり、情報整理ツールの利用の提案、柔軟なグループ分け、生徒間の関係などのサポートを構築したり、段階的で柔軟な締め切りを設定したり、学習経験の速度を調整したりすることによって、指導と学習を差別化することができます。

 単元を特別に設計し、学習の内容、課程、成果を差別化することによって、全生徒がカリキュラムにアクセスできるようにします。例えば、視覚的・聴覚的・運動感覚的なものも含め教材解釈のさまざまな形式を提供する、生徒が理解の表現を示すときに別の方法を選択できるようにする(口頭発表、文書発表、生徒間ワークショップを主催するなどの実践的な方法など)が差別化として考えられます。

(『MYP 原則から実践へ』p.79)

IBで教える教師は、単元設計の際にこのようなことを考慮に入れて、計画すべきだというのです。

全員が同じテキストを読む、全員が同じ問題のテストを受ける、という発想しかなかった私は、これを読んでとてもカルチャーショックをうけました。

自分の能力に合わせて別々のテキストを選択してもいい、別々の課題で評価してもいい、生徒が自分で発表スタイルを選んでもいい!

今まではなんて狭い範囲で教材選びや評価方法を考えていたのかと、思い知らされましたね。

 

先の引用にもあるように、目指すところは「生徒が適切な学習目標を個別に設定し、到達」することにあり、その目標は生徒一人一人の能力によって異なります。

その点について合理的な配慮を行い、生徒個人を最大限に伸ばそうとするのが「差別化」なのです。

 

引用箇所にも挙がっていますが、そのための具体的な方法はいろいろ考えられます。

教材を複数用意し、生徒に取り組みやすいものを選ばせる、というのは私がよく使う方法です。

課題の発表方法を生徒自身が決める、というやり方もあります。

同僚の先生は、年間に論述、プレゼンセーション、ディスカッションの3つのスタイルは必ずやること、と決めて、ただしどの課題でどのスタイルを選ぶかは自由、というやり方をとっていました。自分で課題内容と発表スタイルの一番やりやすい組み合わせを考えるわけです。

海外のインターナショナルスクールの先生に聞いたところでは、振り仮名つきの問題用紙を別に用意したり、試験時間を伸ばしたりすることもあるそうです。

校則をなくして注目された、西郷孝彦先生の桜丘中学校でも、同じような取り組みがあったと記憶しています。

 

もちろん、受け持ちの人数にもよりますが、あれもこれも差別化していては、教師の仕事量は膨大になり、回らなくなります。

そのあたりのバランスが悩ましいところです。

また、既存の試験のやり方や評価の仕方では差別化を実行するのが難しいということもあります。本格的にやろうと思ったら、試験や評価の方法を根本的に変えていかなければなりません。

 

だから全然やらない、というのではなく、

いろんなやり方があるのを知ったうえで、子どもたち一人一人がなるべく力を発揮できるようなやり方を工夫していけたらなと思います。