【読書】『シリーズ国語授業づくり 中学校 文学 主体的・対話的に読み深める』
最近、本棚の整理をしつつ、積読本の消化中です。
この本も、買ったときにさらっと読んで、そのままになっていたのですが、改めて読んでみると、いろいろなヒントの詰まった良い本ですね。
勤務校では、国際バカロレアのカリキュラムを行っていますが、「国語」にあたる科目名は「言語と文学」と呼ばれ、名前の通り「文学」の学習を重視しています。
私もそうだったのですが、大学で文学を専攻してきた人ばかりが国語教師になるわけでもなし、国際バカロレアに限らず、中学生に文学を教えるって何をしたらいいの?というとまどいは、多くの先生が抱えていると思われます。
本書の大部分はQ&Aで構成されていて、
そもそも「文学作品を教室で読む」ことにどのような意味があるのか。
「作品分析」と「教材研究」はどのように異なるのか。
など、基本的なところから丁寧に解説しています。
本書では「文学教材で身につけさせたい力は文学を楽しみ味わう力」だとしたうえで、そのための方法を、
①読解的に文学的文章の特徴を捉える方法
②読書的に生涯にわたる文学との付き合い方を知る方法
の二つにわけて考えることを提案します。
①は、教科書教材をはじめとするテクストを精読し、グループ活動などを通して批判的に読むようなやり方。
国際バカロレアでいう、テクスト分析の課題です。
また②は、ビブリオバトルやリーディング・ワークショップといった、個人の読書体験を深めていく活動にあたるでしょう。
これらの二つの方法を、どちらか一方に偏ることなく、バランスよく中学3年間のカリキュラムの中に位置づけていくことが大切だと述べられます。
たしかに、言われてみると、従来の国語の授業では、これらの目的が一緒くたになっていました。
そのため、何をやっているのか分からない、どのような力がついたのか実感がわかない、挙句先生の話していることをそのままノートに書き写す、という授業にもなりかねません。
本書で言うように、単元の目的をはっきり区別して、生徒にもっと明示的に示していく必要があるのかもしれませんね。
もう一つご紹介。
本書では「読みの深さ」とは何か、ということについても分かりやすく説明しています。二か所引用します。
「読みが深まる」とは、読みにおいてテキストの中の部分と部分とがある範囲で新たに緊密に関連づけられることであり、「読みの深さ」はその範囲や緊密さに規定されます。
部分と部分とを関連付けることは、読み手がテキストの中に文脈を生み出すことと言い換えることもできます。そうした部分と文との関係がテキストの中で離れているほど、あるいは緊密であるほど、深い読みになっていることが多いようです。
そして、そのためにテキストの中から「偏り・欠落・矛盾・飛躍」などを見出していくことが促されます。
国際バカロレアの授業内では、文学作品の分析をした後、その分析をもとにした文学論評(コメンタリー)や、小論文の課題に取り組むことがよくあります。
教えていて難しいのは、何が「良い」文学論評・小論文なのか、ということがなかなか生徒に伝わりにくいところです。
感想文みたいな文章になったり、テクストの一部分だけしか参照していなかったりして、どうしても、書きながら教えていく、ということになります。
まずは、ここで述べられているような原理原則を、具体例を交えながら生徒に丁寧に説明していくことで、生徒も課題のイメージがつかみやすいのではないかと思いました。
次やるときには、使わせてもらいます。