保護者と行う哲学対話
先週、保護者の企画した哲学対話イベントに参加しました。
私の勤務校では、中学生の道徳で哲学対話を行っています。
担当するのは、日本でも珍しい「学校駐在哲学者」土屋陽介先生です。
哲学対話について詳しくお知りになりたい方は、この本をご覧ください。
(勤務校の実践も紹介されています。入門書としておすすめです!)
もともとは、子どもたちがやっている哲学対話を、親も体験してみたい、というところから始まりました。
その後、もっとやりたい、継続的なイベントにしたいという声があがり、有志の保護者の方に企画していただいています。
今では年に3回ペースで行うようになっています。
保護者、教員、生徒で話したい人が集まり、毎回その場で決めた問いについて話し合います。
今回は「働き方」がテーマでした。
この保護者の行う哲学対話には、いろいろなメリットがあると思います。
1.学校で保護者が自分の考えを話す
学校に保護者が来る機会というと、文化祭などの学校行事はありますが、それ以外には三者面談や、後は呼び出されたときなど、あまり多くはありません。
そして、せっかく学校に来ても、先生の話を聞く一方、ということになりがちです。
哲学対話であれば、保護者は自分の考えを、十分に話して帰ることができます。
2.保護者、教員、生徒が対等に話し合う
ファシリテーターはいますが、話し合いは参加者がみな対等です。
普段の学校であれば、どうしても力関係が生まれますが、哲学対話の時間にはそれをいったん保留にすることだができます。
普段の立場を少し離れて対話することで、いろいろな発見があります。
3.親子関係に変化をもたらす
保護者と生徒が同じサークルで対話することで、いろいろな気づきがあるようです。
ある保護者から、自分の子どもと同じくらいの子が話している内容を聞いて、うちの子もこういうことを考えているのか、と知るきっかけになった、と聞きました。
また、子どもの側からしても、ある保護者の話を聞いて、自分の親はどう考えているのだろう、と想像することにつながります。
なかなか普段から親子で対話をすることは難しいと思いますが、このような機会を通して間接的にでも親子関係に変化が生まれるのではないかと思います。
4、保護者ー教員の関係に変化をもたらす
同じように、保護者と教員の関係にも変化が生まれます。
クレーマー、モンスターペアレントという言葉で言われるように、保護者対応はネガティブな要素として語られがちです。
しかし、哲学対話の場であれば、根っこの部分ではどう思っているのか、そもそも何が問題なのか、という話し合いも可能です。
子どものために、という目的は一致しているわけですから、どういうところが上手くいかないのか、どこで悩んでいるのか、などの問題点についてオープンにして話し合うことで、理解し合えることも多いと思います。
これは、なかなか三者面談ではできないことです。
こういう活動が、クラス単位で行われるようになれば、もっと学校にまつわるコミュニケーションは豊かになっていくのではないかと考えます。
保護者との哲学対話、もっと広まってほしいです。