スーパーバイザー・ミーティング
今日は始業式で、生徒は掃除とHRを終えたらすぐに帰ってしまいました。
午後は先生方で集まって、スーパーバイザー・ミーティングを行いました。
何のことかとお思いでしょうが、
国際バカロレアMYPの修了要件に「パーソナル・プロジェクト」というものがあります。
簡単に言えば、生徒が個人で好きなテーマを選び、自分で取り組んでいくという活動です。
生徒は自分で決めたプロジェクトに、中3〜高1にかけて1年近く取り組むのですが、その生徒の活動をサポートするのが「スーパーバイザー」です。
今日行ったのは、そのスーパーバイザーの先生方(ほとんどの先生が担当します)に向けて、生徒のプロジェクト学習をどのようにサポートすれば良いか、という研修会なのです。
今日は、プロセスジャーナル(活動日誌)の書き方について学びました。
生徒の自主的なプロジェクト学習と言っても、IBO(国際バカロレア協会)によってさまざまな決まりがあります。
そのうちの一つに、生徒はプロジェクトに取り組んでいる間は、プロセスジャーナルを作ること、というものがあります。
プロセスジャーナルのスタイルは自由です。
ほとんどの生徒はPCのドキュメントを使って記録していきますが、手書きノートや写真、音声データで記録していくこともできます。
その内容も、
アイデアメモ
読書記録
ウェブの抜粋
計画表
面談記録
制作過程の記録
振り返り
など、自分のプロジェクトの進行に必要であれば何でも日誌に書いていきます。
これらを生徒が自分で取り組んでいくのです。
もちろん、全員が最初から上手くできることはありません。
そのためにスーパーバイザーがいて、生徒のプロジェクトが滞っていたら、その都度サポートしていきます。
IBの要求はなかなか大変なことが多いのですが、それによって、プロジェクト学習のノウハウを学べているところも大きいです。
リーディング・ワークショップでの悩み
昨年リーディング・ワークショップに取り組み始め、効果は感じるものの、同時にいろいろな悩みや困り事も生まれてきていました。
先日の勉強会では、すでに何年も実施されている先達からアドバイスをいただく機会を得ました。
【悩み1】
同じような本(ジャンル)を読み続けている生徒に、もっといろんなジャンルに挑戦してほしいと思うが、どう働きかけたら良いのか。
(アドバイス例)
・まずは教師の側からブックトークをするなど、生徒の関心を高めること。先生が面白いと思っている本には子供は興味をもつ。
・時には図書館でなく教室でやったり、読むジャンルを限定する(説明文、新書など)のも有効。
・一冊の本から次の本へのつながりを意識させる仕掛けを使う。
・知らない本について語るブックトークが面白い。
・ねばり強く、その子にあった本を紹介していく。
・自分の紹介で限界を感じる時は他人(司書の先生、友達)を使う。
【悩み2】
生徒は好きな読書ができて楽しんでいるようであるが、それを授業としてよいのか。勉強したくなくて、逃避になっているのではないか。忙しい学校生活の中で癒しの時間になっているように感じるが、それでいいのか。
(アドバイス例)
・そもそも、生徒が興味を持って読んでいくならそれでいいのではないか。まずは読書の基礎体力が大事。
・生徒は何かと忙しいので読書の時間がとれていない。国語の時間にその時間を確保するのは大切。
・読書を通じて身につけた考え方に勝るものはない。
・結局、読書が得意だと勉強もできるようになる。
・アウトプットとつなげると読書への意識が高まる。
・高校の現代文ではテキストの難度が一気に上がるので、説明文系のものは読ませる。
【悩み3】
自由に読んでいいよというと、寝転がったり本当に自由な姿勢で読んでいるが、それでいいのか。マナーや公共の場としてのふるまいについて、指導した方がよいのか。
(アドバイス例)
・目標が本の世界に浸るということであれば、どんな姿勢でもよいのでは。
・確かに図書室より教室の方が静かに読める。
・寝転がる用のラグを買うなど、場所を限定してみてはどうか。
・実際に担当する教師の身体的な抵抗に合わせてルールを決めた方が良い。(さすがに制服で床に寝るのはやめてほしい、など)
・自分の部屋を想定させるのではなく「カフェ」など、場の設定をすると良いかも。
先輩方の実践から生まれたアドバイスは実に参考になります。
また3学期のワークショップ実施が楽しみになりました。
今年の抱負
明日から仕事始めです。
今年取り組んでいきたいことを挙げてみます。
(1)概念ベースの授業づくり
国際バカロレアのカリキュラムに関わって、4年目に入ります。
勝手が分かってきたと同時に、さまざまな課題も見えてきました。
ただ、IBには、これまでの国語教育になかったアプローチがあり、既存の国語教育で足りていなかった部分を補うための可能性を感じています。
まだまだ悩むことが多いのですが、新しいユニットの開発、これまでの実践のブラッシュアップに取り組んで行こうと思います。
(2)ワークショップ型の授業
昨年の2学期から、リーディング・ワークショップ、ライティング・ワークショップを始めました。
やってみて、IBと目指している方向は同じだということ(とくにMYPにおいては)を改めて実感しました。
また、IBクラスだけでなく、同時に受け持っている普通部のクラスでも実施したのですが、そちらでも(普段やっていない分、そちらの方が?)有効だとも感じました。
今年はワークショップの回数を増やしていくととに、実践者として、生徒の様子や変化にまで気を配れるようにしていきたいです。
(3)共有と発信
昨年は、「概念ベース授業づくり研究会」を立ち上げ、このブログを始め、ツイッターまで始めてみました。
今年はそれらをきちんと継続し、軌道に乗せていくことを目指します。(まあ、無理しない程度で)
今年も、実践の感想や、もやもやしていることをとりとめなく書いていくことになるとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
2018年仕事納め
昨日に引き続き勉強会&忘年会。
今日はIBに関心のある先生たちで集まりました。
勉強会の内容は、DP「文学」最終試験の問題をお互いに解いてきて、みんなで読み合おうというものです。
DP「文学」の最終試験は、複数の試験に分かれているのですが、
そのうち試験問題1は、初見の詩や文章について論評を書く、という課題です。
試験時間は2時間で、字数制限はないのですが、だいたい2000字〜3000字程度書きます。
原稿用紙に手書き(ボールペン)です。
また試験問題2は小論文です。
例えば、
小説には過去の出来事が回想として挿入されたり、これから起こることが暗示されることがあります。これらはどのように用いられ、どのような効果をあげているか論じなさい。
といった感じの問題が出題されます(ぼやかして書いています)。
これを、授業で学習した複数の作品(テキストは文庫本などで一冊丸ごと読む)を例に挙げながら論じていきます。
これも試験問題は2時間で、手書きです。
本当は生徒と同じ状況で解くのが良いのでしょうけど、少しひよって、
パソコンで書き直しながら作成し、それでも1本3時間くらいかかって、3000字程度の文章を書いて持って行きました。
会では、お互いに書いてきた文章をお酒を飲みながら読みあって、いろいろ感想を言い合ったり、疑問を投げかけたり。
少人数だったこともあり、中身の濃い、実に勉強になった会でした。
こういう問題の解き合いや勉強会が校内でできるといいなぁ、と考えました。
ただ、考えるのにも文章を作成するにもかなり時間と体力を使うので、仕事上の余裕が不可欠ですね。
今日は2018年の仕事納めでもありました。
9月からこのブログを始め、授業をやりながら考えたことや、IBや探究について思うところをつらつら書き留めてきました。
まだまだ悩みは尽きないのですが(むしろどんどん増えていくのですが)、ブログを通じて考えを整理でき、また時々読み返すこともできて、やって良かったなと思います。
ブログ読んでますよ、参考になります、と言ってもらえる機会も増えてきて、私の悩みも少しは役に立っているのかなとも感じています。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
年明けにまた再開しますので、2019年も引き続きよろしくお願いいたします。
私たちはずいぶん乱暴なことをしている
今日は哲学対話仲間と、今年最後の勉強会&忘年会でした。
そこで出た話の中で、いまの自分の問題意識にぴったりのものがあったので、書き留めておきたいと思います。
それがタイトルにも書いた、私たちはずいぶん乱暴なことをしているのではないか、という問いかけです。
これは学校で哲学対話を行う際の話ですが、
つまらない(惰性的、形式的な)対話にしないためにどうすれば良いのか、
生徒主体の対話を行うために生徒は何をするのが良いか、
どこまで生徒に任せるのか、
授業中の不規則発言をどこまで許容するか、
このように考え、注意しなければならないことが山ほどあります。
こういうもっと細かいことまで考えて実践していかないと、哲学嫌いを増やしてしまうことにつながりかねません。
そうなると本末転倒です。
また、先生がずっと対話の手綱を握りしめ、対話を管理しようとするのも問題です。
対話が上手くいく、いかないの責任がすべてその先生のものになってしまいます。
1人の先生がずっと哲学対話を行っていくのも、リスクが大きいと言えます。
もっと授業のハードルを下げて、いろんな先生が楽しく哲学対話をしていく方が良いのではないか、という意見です。
いまIBのカリキュラムで教えていて、探究型の授業に取り組んでいますが、わたしの危機意識も全く同じです。
これは以前にも書きましたが、1日に6時間も7時間も授業をやっていて、そのうち何時間を探究型、アクティブ・ラーニングにするのでしょうか。
1、2時間真剣に頭を使ったら、大人でもくたくたになります。
答えのない、難しい問題にいったいどれだけの子どもが1日ずっと取り組んでいられるでしょうか。
こういったマネジメントはあまり考慮されません。生徒の自己管理スキルに集約されていきます。
各教科の先生が、生徒の負担を顧みず好きにやりたい探究授業をやって、好きに課題を出す感じ。これをどう抑制すればよいのでしょう。
探究やアクティブ・ラーニングのムーブメントは盛り上がってきても、このような、細やかな配慮まで行き届いていないのが現状です。
探究型の授業は、コツをつかめば発想できるようになります。
でも、意識しなければそれはすぐに、生徒にとって難度の高い課題になってしまいます。
なぜなら、教師にとっては、難しい課題を作ることよりも、目の前の生徒にとって適度な易しさの課題を作る方が難しいからです。
細かいことまで考えて、生徒にとって「意味のある易しい課題」を考えていく必要があります。
カードを使った教員研修
冬休み初日、教職員の全体研修を行いました。今回私はファシリテーターのひとりとして、企画から行っています。
これは、アクティブ・ラーニングを行うために有効なポイントや教師の心がまえなどが、キーワード、短い説明、イラストなどでカードになっています。
グループの構成は、学年、教科、年齢がなるべくばらばらになるように組みました。
ウォームアップは教頭より、
「主体的・能動的学習とは( )であるが、( )でない」
この( )に入る言葉を考えて、グループで共有しましょう。
という課題が出され、メンバーに自分の考えを伝えていきます。
このような答えのない問いについて考える活動を通して、発言するハードルを下げ、お互いに何でも自分の意見を言い合える雰囲気を作ります。
さて、最初のセッションは探究型授業について。
カードを机の上に並べて、自分が普段から意識して取り組んでいること、得意としていることについて、発表していきます。
それが終わったら、自分は上手く出来ていないから他の先生がどうやっているか聞きたい、という項目を選び、グループのメンバーに質問していきます。
さらに、何枚かのカードを持って代表者が、他のグループに意見を聞いてくる時間も設けました。(ワールド・カフェ方式)
ワークショップスタイルの研修は、本校では何度もやっていて慣れてきているのですが、今回はいつも以上にみんなが話し、考え、盛り上がっているように感じました。やはりカードの効果があるのかもしれません。
このカードを使って感じたメリットを挙げておきます。
カードを使うことで、共通のキーワードや観点についてのディスカッションがしやすくなりました。
また、カードに書かれていることは抽象的な内容なので、ディスカッションではなるべく具体的な話をしてほしいとお願いしてありました。その結果、自分の経験をみんなで共有するような話し合いにどのグループもなっていました。
自分が出来ていないことを話すのは勇気がいりますが、カードを使うことで苦手なことを他の先生に聞いてみる、というのが気軽に行えるのも良い点でした。
とくに、普段の研修会ではIB担当の先生が、他の先生にやり方を教えるという流れになりがちなのですが、今回はカードを使うことで、それぞれの立場や経験から効果的な方法を提案する話し合いになっていました。
後半のセッションでは、本校の行事をさらに良いものにするにはどうすればよいか、
これもカードを使いながら検討していきました。
午前中をフルに使った研修会はなかなか疲れますが、みなさん積極的に参加してくださり、企画した甲斐がありました。
問題点を共有し、経験を交換し合う良い機会になったと思います。
期末考査雑感
高校1年生現代文の試験。
今学期はワークショップを取り入れたこともあり、テストのやり方を大幅に変えている。
これまでは、教科書教材を精読した上、そのテキストについての問題を定期考査で出題していた。(多くの学校がこうしていると思う)
なかなか勉強に対する生徒の意欲が上がらず、テストも空白が目立ち、平均点も悪い状況が続いていた。
なんとか勉強に向かわせようと、事前に問題演習のための対策プリントを配ったりしていたのだが、問題と答えを丸暗記してくる生徒が増えただけだ。見かけ上、平均点は少し上がるが、本質的な改善ではない。
テストの度に「問題演習のプリントをください」と当てにする生徒も目立つようになってきた。
今学期は、授業中の課題を重視することとし、教科書は多読のための教材として授業最初のミニレッスンで用いている。
精読はいったん止めて、本文の音読と要約、筆者の考え方を大づかみにとらえることを集中的にやってきた。
定期考査は漢字や語句の知識問題の他、初見の問題を出している。
今学期からこのやり方にして、中間、期末とテストをやってきたが、生徒の取り組みが向上してきたことが感じられた。
答案の空欄が減り、問題に取り組んでいる様子が採点していて伝わってきた。
記述の解答も、これまでは本文の意味を理解しないまま丸写ししてくるような解答が多かったのだが、今回は本文で書かれていることを自分なりに理解しようとし、まとめながら記述している解答ばかりだった。
勉強が苦手な生徒にとっても、ワークショップ型の授業スタイルは効果的なのではないか、そう思えるテストの結果だった。