Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。IB=国際バカロレア、RW=Reading Workshop、WW=Writing Workshop、P4C=子どものための哲学

概念キーワードを小論文の構想に活かす

IBでは、概念ベースの単元づくりが求められ、そのために概念のキーワードを設計の際に用います。


IB用語ですが、例えば「重要概念」では、「コミュニケーション」「論理」「ものの見方」といった、さまざまな教科で共通して使えるものを、16語、リスト化しています。

また、「関連概念」という、教科でとくに用いる概念もあります。例えば国語(IBでは「言語と文学」とという科目名です)で用いるのは、「登場人物」「設定」「ジャンル」「受け手側の受容」など、12のキーワードです。

これらの概念キーワードを組み合わせて、単元を通して生徒が理解すること(探究テーマ)を考えていきます。


これらのキーワードは、単元を作る際に教師が選び、単元を実行中のさまざまな場面で生徒に提示します。その経験の蓄積があり、生徒は抽象思考や、概念ベースの探究に慣れていく、という仕掛けです。


MYP(中学、高1)でこういう用語に慣れておくと、DP(高2、高3)あたりでは、それらを自分で使って考えを広げたり、深めたりできるようになってきます。

教師の側からすれば、そういう課題の取り組ませ方が可能になります。


例えば、いま「お笑い」を素材にした小論文を書く課題をやっているのですが、

テーマ(問い)、意見、理由や根拠を各自で考え、小論文の構想メモをまずは持ち寄ります。

最初は、サンドウィッチマン、EXIT、かが屋など、自分が面白いと思う芸人のネタを使ってやってみたい、というアプローチがほとんどで(高校生なのでそれでいいのですが)、問いとしても「かが屋のネタはなぜリアルなのか」など、ちょっと小論文としては深まりづらい問いが選ばれていたりします。


そこで、このタイミングで、先ほど紹介した重要概念や関連概念、さらにはグローバルな問題を考える上でのキーワード(歴史、政治、科学技術、ジェンダー、バイアスなど)をいくつかピックアップして生徒に提示します。

そして、各自でいくつかのキーワードを選択し、それをふまえて問いを立て直すように指示します。

わずかこれだけでも、問いの立て方や、小論文のアプローチがずいぶん変わります。


例えばEXITのネタを使いたい生徒であれば「チャラいとはどういうことか」「私たちはどこからチャラいと感じるのか」(コミュニケーション、受け手側の受容)といった問いが作れます。

かが屋を選んだ生徒も「リアリティはどこから生じるのか」という問いになり、これをコント中の言葉の使われ方から分析していくことになりました。

その他にも「お笑いは私たちの先入観をどのように利用しているのか」「技術の発展によってお笑いはどう変化したか」「コンプライアンスの強化は、お笑いにどのような影響を与えたのか(この生徒は、ハリウッドザコシショウを分析したいそうです)」といった面白そうなテーマが生徒たちから出されるようになりました。


生徒の探究活動や論文づくりの指導の際、いつもテーマ選びに苦戦します。

生徒の興味に基づきつつ、ある程度探究として深まりそうなテーマを、生徒自身にどう立てさせるか。

いろいろやってきましたが、今回の概念キーワードを使う、という方法は、単純なアプローチですが結構有効だと思いました。

もちろんそのためには、それ以前に概念キーワードに見慣れている、つまり概念ベースの授業や探究活動に取り組んでいることが必要ですが。


課題に取り組む順番として今回良かったなと思ったのは、はじめに自分で好きな芸人やネタ(具体)を選ばせたところです。

最初から抽象的な問いを立てると、その後、それをサポートするだけの具体例を見つけ出すのが難しく(高校生にとってはハードルが高い)、そのため浅い記述で終わってしまうということがよくありました。

また、具体的なテクストの分析だけだと、何のためにそれをやっているのか、読み手に何を伝えたいのかが曖昧なまま、手前勝手な話が進んでいく、ということもあります。


今回のように、最初に使いたいテクストのあたりをつけておいて、その後に概念キーワードを選ばせて、小論文の構想を考えるようにする。このアプローチだと、高校生にとって具体と抽象のバランスが取りやすく、考えやすくなるのではないでしょうか。