Language & Literature 新カリキュラム
週末3日間、神戸でIBワークショップに参加してきました。
膨大なインプットと、それに負けない参加者のみなさんの熱意により、
大変充実した3日間を過ごすことができました。
さて、DPのLanguage & Literature(言語と文学)は、この夏から新カリキュラムに移行します。(勤務校では来年度生から実施)
IBのカリキュラムは、およそ7年ごとに改定があります。
新しい教育研究の成果や、世の中の情勢の変化に合わせ、IBの教育課程もどんどん変化していきます。
日本の学習指導要領がおよそ10年ごとに変わるのと比べると、IBの方が変化が速いと言えます。
私の勤務校は最近IBを始めたばかりなので、私にとっては初の改定ですが、ワークショップでご一緒した長年IBを教えていらっしゃる先生は、「慣れてきた頃にはもう改定なのよ」とこぼしておられました。
さて今回の改定では、およそ次のようなところが大きな変更点です。
・2021年入試から新カリキュラム
・テキストベース、トピックベースの要素が強かったが、より概念ベースになった
・最終試験の内容が変わった
・「非文学テクスト」の扱いがより大きくなった
・実社会とのつながり、グローバルな問題との関わりが強調
された
・ポートフォリオの作成が必須になった
IBでは、小説や詩歌などの文学教材だけでなく、「非文学テキスト」(絵画、写真、新聞、映画、マンガ、ブログ、広告…)を多く取り上げます。
それらの扱いがとても重要視されています。
今回の改定をもとにして、また教科内でコースアウトラインを検討します。
(現行カリキュラムでのコースアウトラインをせっかく作ったのに…)という思いはありますが、教師も常に学び続けるというのがIBの基本姿勢ですので、
また考え始めることにします!
生徒に、どんなテキストで探究したいか聞いてみるところから始めようかな。
Job Alikeに初参加
4月、5月は何かと忙しく、ブログの投稿がすっかり滞ってしまいました。
今年度、勤務校ではあたらしくMYPを担当する先生が多数いまして、
校内で、また教科内めIBについて、概念ベースの授業づくりについて学びあっています
新任の先生にIBをどう伝えていくか、校内研修のやり方についても、またいずれ書いてみたいと思っています。
さて、先日から神戸に来ています。
週末3日間、IBO(国際バカロレア機構)のオフィシャルワークショップに参加するためです。
それに先立って、同じ会場でJob Alikeも開催され、そちらに初めて参加することができました。
Job Alikeとは、IBで教えている先生たちの集まりです。
同じ教科の先生同士で集まって、情報の共有や授業アイデアのシェアを目的にしています。
今回私が参加したのは、言語A Japanese Language & Literatureのグループで、
国内外のインターナショナルスクールの先生や、一条校でIBに取り組んでいる先生方とお会いすることができました。
理論的な勉強も良いのですが、具体的な実践の共有はやはり楽しいですね。
DPの授業をどうしていくか、悩んでいたところだったので、いろんなヒントをいただくことができました。
また、私のやっている概念ベース授業づくり研究会も、要は同じことがやりたいんだなと再確認できました。
参加者のお一人から、ブログ読んでますよ、と言っていただき、
細々と書いていた記事が少しは役に立ったのかなと、うれしく思いました。
IB本が完成しました!
二年がかりで取り組んできた、IB・MYP「言語と文学」について解説した本がようやく完成し、本日私の家に届いていました。
『「探究」と「概念」で学びが変わる! 中学校国語科 国際バカロレアの授業づくり』
というタイトルで、明治図書出版から出ます。
IBのカリキュラムについては、公式ガイドブック(その日本語訳)を読んでもなかなか理解するのは難しく、また専門のワークショップの機会も限られています。
実際、どうやってIBの授業を組んで良いか分からない、そういう先生の役に立つだろうと思います。
また、この本は、IB校の先生にだけ向けて書いたものではありません。
多くの中学校(または高校)で使える、これからの授業づくりヒントがたくさん詰まっていると思います。
アマゾンでも予約が始まっています。
お手元に届くまでにはもう少しかかりますが、ご期待ください!
IBの授業づくりを説明する
IBの教科リーダーや、校内の授業研修を担当しています。
そのため、4月最初には、新任の先生や始めてIBの授業を受け持つ先生に対して、IBではどのように授業を設計するのかを説明し、理解してもらわなければなりません。
私も学びながら、試行錯誤しながらではありますが、今の理解の範囲で、年度初めに他の先生方にした説明は次のようなものです。
(授業経験のある先生方へ)
みなさんは、これまでどのような手順で授業を設計していますか?
(新任の先生へ)
大学の授業や教育実習で、どのような手順で授業を計画してきましたか?
まず教科書の中から教材を選んで、教材分析をして、問いや課題を考えていくと思います。
指導案には、その教材を通して身につけさせたい力や、学習指導要領に沿ったねらいを書きます。
このやり方で単元を設計すると、一つの教材で一単元、ということが多くなります。「走れメロス」で5時間、といった具合に。
IBでは、単元(ユニットと言います)をもっと広くとるのが一般的です。
設計の順番として一番違うのは、その単元を通してどのような探究をしたいのか、どういうことを考えさせたいのか、どんなことを理解してほしいのか、そういう目標を先に立てるということです。
これを「探究テーマ」と言います。
例えば、「論理的であるとはどういうことか」とか、
「読者は小説を通して教訓を読み取ることがある」
というように、抽象的で懐の広いテーマを設定します。
これは授業を計画する教師が自由に設定することができます。
「探究テーマ」は、一つのテキストにとどまらず、概念的であることが求められます。
(その時に用いる「概念」については、また後日説明します。)
そういう「探究テーマ」を立てた後で、
どのような学習活動や課題を通してそれを達成するか、
そのためにどういうテキストを使うか、
という順番でユニットを設計していきます。
単元(ユニット)を設計する順番が異なるのです。
一つのテキストから設計を始めると、発想がそのテキストの中だけでとどまってしまい、別のテキストと結びつけたり、探究的な課題を考えるのが難しくなります。(一つのテキストの深掘りになりがち)
最初からテーマを広く取っておくと、複数のテキストを結びつけたり、探究的な学習活動が思いつきやすくなったりします。
もちろん、このテキストを読ませたい、というところからスタートしてユニットを組むこともあります。
ただ、その場合でも、そのテキストを通してどういう探究テーマが立てられるか、概念的に考えることを忘れないようにしてください。
-と、こういった話を最初にしました。
いきなりIBとは…概念とは…といった概論から入るより、
こうした具体的な授業づくりの話から入った方が興味が持てて、理解が早いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
漢字の学習法を見直す
新学期に入り、生徒に不安なこと、今年度期待することを聞いていたら、
漢字が書けない、苦手だからどうにかしたい、という意見が多く出ました。
教科書の新出漢字や、漢字ドリルから範囲を決めて漢字テストを行ってきましたが、生徒の自主努力に任せっぱなしで、たいした指導やアドバイスはできていませんでした。
一部の真面目な生徒は事前に準備、練習してくるし、普段から新書などを自分で読んでいる生徒はあまり勉強してこなくてもできます。
逆に、テスト直前に慌ててテキストを開き始める生徒は、仮に短期記憶で少しは書けたとしてもすぐに忘れてしまいます。最初から諦めて何も勉強しない生徒も多くいます。
こちらとしては、再テストなどで対応するのですが、どうも徒労というか、効果を感じません。
教員生活もずいぶん長くなってきましたが、いまだにこんな体たらくです。
そこで、今年度は、思い切ってやり方を変えてみたいと思っていました。
そんなタイミングで見つけて、参考にさせてもらったのが、土居正博『クラス全員が熱心に取り組む! 漢字指導法 -学習活動アイデア&指導技術-』(明治図書、2019)です。
小学校での実践ですが、中高でも使える内容がたくさんありました。
本書では、「漢字が書けるとはどういうことか」という根本的な問いに立ち戻り、「漢字練習(文字学習)」と「漢字活用練習(語彙学習)」を明確に区別して指導するアプローチが紹介されています。
この本では、漢字学習のステップを、
1 見慣れる
2 読める
3 大体の形が分かり、書ける
4 とめ・はね・はらいなど正確な形が分かり、書ける
5 様々な使い方が分かる
6 自分が作文で書くときなどに自在に使いこなせる
の6段階で整理していました。1〜4が文字学習の段階、5と6が語彙学習の段階、に当たります。
私もこの本を読む前に、似たようなことは考えていたのですが、段階を示してそれに即した学習法を提示する、というアプローチまではできていませんでした。
この本を読んで、その有効性が分かった次第です。
今回、漢字に苦手意識を持っている高校生に対して、自分の勉強法をもう一度見直してみよう、という話をしました。
私の場合は、「漢字を知っているとはどういうことか」という問いを生徒と共有した後、次の五段階で説明しました。
0 読めない、見たことがない
1 読める
2 文章中で意味が分かる
3 自分の作文で使える
4 書ける
そして、まずは0→1にするために、テキストに出てくる漢字を音読すること、
1→2にするために、テキストの例文や語句の意味を音読すること、辞書を引くこと、
2→3にするために、テキストの例文以外の短文を書いてみること、
といった勉強法を紹介しました。
ほとんどの生徒は、漢字テストの直前に慌てて覚えようとするため、まずテキストを読んで言葉として漢字の意味を理解する、というステップをすっ飛ばしています。
まずはこのステップにじっくり時間をかけよう、そうすると3→4の勉強をした時に忘れにくくなるよ、という説明をしました。
ほとんどの生徒が、こういうことを考えたことがない、といった感じで新鮮な反応でした(こちらも、こういったことを伝えることができていなかったことを反省しました)。
根本に立ち戻り、勉強の仕方をゆっくり一緒に考えることで、モチベーションアップにもつながったと思います。
あとはこの熱を冷まさないように、教師が継続的に声がけし、勉強をサポートしていく必要があります。
1週間遅れの授業開き
ようやく通常授業を開始することができました。先週お休みしていた関係で、教科担当者同士の相談が不十分だったり、シラバスや単元計画が未完成だったりと、どたばたの中でのスタートとなりました。
そういう状況でもあったので、慌ててやってもしょうがないと思い直し、授業開きはゆっくり対話するところから始めました。
去年から継続で受け持つクラスでは、去年の取り組みを通して成長したと思ったところ、逆にまだ不十分だと思うところを、私の方からまずは話しました。
その上で、
「今不安に思っていること」
「今年度の授業に期待すること」というテーマで対話をしました。
クラス替えをしたばかりでもあり、みんな遠慮しがちにぽつぽつと話をしていく感じでした。
不安なことは特にない、という生徒も割に多くいましたが(話したくないだけかも)、
高校2年生ということもあり、大学進学のこと、成績のこと、将来やりたいことがない、などの話題を挙げる生徒が目立ちました。
今年新しく受け持つ高校1年のクラスでは、私の自己紹介を終えた後、同じような対話をしました。
こちらは、まだ大学入試が遠い分、好きなことが見つからない、成績をどう上げたらいいか、文系理系やDPに行くか行かないかをどう決めたらいいか、などの不安が挙げられました。
いずれのクラスでも、最後に私の方から、今年度はもう一歩踏み込んで問う習慣をつけていこう、という話をしました。
例えば「英語ができるようになりたい」と思ったのであれば、「じゃあ『英語ができる』ってどういうことだろう」「英語ができるようになるためには何をしたらいいのだろう」というように、一つ考えを深めるための問いを大切にしていこう、という具合に。
今年度も対話を中心に授業を設計していきたいと思いますが、私の方でも、こういう一歩踏み込む問いを大事にしていきたいと思います。
最初にゆっくり対話をして、気持ちを揃えていくのは、教師同士の新年度ミーティングに限らず、授業開きとしても良いものですね。
4月の会議づくし
3月終わりから体調を崩していましたが、4月入り、いきなりインフルエンザにかかってしまいました。
いろいろあって抵抗力が落ちていたのが原因かと思います。
その原因の一つかもしれないのが、4月当初からひたすら続いたさまざまな会議、打ち合わせ、ミーティングの類。
ほんといろんな種類の話し合いがあって、普段話好きの私もくたくたになりました。
なぜこんなに会議が多いのか。
もちろん、やって良かったと思う会議もありますが。ただでさえ忙しいのに、このタイミングでなくても良くない? と思うような会議もあります。
会議だけをしていれば良いわけではなく、教室の環境整備に、シラバス作りや授業準備など、他にもやりたいことはたくさんあります。
やって良かったと思うのは、次の二つです。
(1)職員全体で、学校の教育目標、現状、課題の確認
4月最初の職員会議で行われましたが、これは必須だと思います。
とくに年度の最初に新任の先生も交えて、学校の教育目標について共有することは大切です。
学校の教育目標が言葉だけの形式的なものになっていたり、抽象的過ぎて実際の教育活動とどう結びついているかあいまいだったりするケースも多くあると聞きます。
適切なタイミングで、自分たちの学校は何を目指しているのか、卒業までにどういう子どもたちを育てたいのか、確認する機会は必要でしょう。
4月の最初はそれにぴったりです。
(2)各教科で、どのような生徒を育てたいのか、目標を定める
私の学校では、まだスタートして年数が経っていないということもあるのですが、
教科としてどのような生徒を育てたいのか、中高6年間を通して何を身につけさせたいのか、
そういった目標の設定と共有が十分にできていませんでした。
今年度は、最初の教科会で十分に時間をとって、それぞれの先生が自分が取り組みたいこと、目指していることを話し、
上位目標というか、みんなで共有できる目標は何かについて話し合う機会を持ちました。
普段はなかなか雑務に追われ、ゆっくり話す時間が取れないのですが、こういう年度始めに抽象度を上げて話し合う時間があるのは良いことだと思います。
今回の話し合いを通して、国語科としての目標は「言葉を楽しむ、言葉を通して背骨を作る」に決まりました。
細かい価値観や手法の違いを超えて、チームとしての一体感を強めることができたと思います。
総じて考えてみると、4月にやるべき会議としては、「そもそも」について考え、それを共有する時間をたっぷり取るのが良いかと思います。
この学校は何を目指しているのか、教科として今年度取り組みたいことは何か、自分はどんな教育がしたいのか…
そういった根本的なことについて、みんなで話し合い、考えを共有し、チームワークを高めていく、そういった時間を多くとるべきです。
授業をより良くするためにどんな方法があるか、といったHOWの部分については、4月に詰め込んで研修をやるより、目標を共有した後で、1年間じっくり取り組んでいく方が良いでしょう。
さらに、4月あたまにやるべきことは、不安を極力減らして気持ちよくスタートするための準備です。
1年間の見通しを十分に立て、最初の方の単元の準備をきちんと終わらせておく。
年間を通して行いたい活動の下準備をする。
自分のホームルーム教室を整備する。
事前に生徒の情報を頭に入れておく。
個人個人でやるべきことが山ほどあります。全体研修を詰め込みすぎて、その時間が奪われてしまい、不安の中で新学期をスタートさせなけれなならないのであれば、それは本末転倒でしょう。
教育の質を高めるために全体の会議や研修時間を増やす、というのではなく、
個々の教員の連携に任せ、そのための時間をたっぷり取る、という仕組みにしていく必要があると感じました。