Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

パーソナル・プロジェクトの評価「きじゅん」について

MYPの修了要件の一つに、パーソナル・プロジェクトを完成させる、というものがあります。

本校1期生は日本語による手本がないなかで、試行錯誤しながら取り組んでいます。

そして校内締め切りも近づいてきた今月、最後の追い込みです。

 

パーソナル・プロジェクトとは、生徒が個人の興味にもとづいたテーマに取り組み、その成果をまとめて報告する、というIBの活動です。

完成させるためには、振り返りのレポート(日本語で3000字~7000字)とジャーナル(記録日誌)の抜粋をまとめ、提出しなければなりません。

自分の好きなプロジェクトに取り組んでいる間は、自由で楽しい活動なのですが、最後の振り返りのレポートをIBの要件に合わせて書くのが、子どもにとっては本当に大変です。

 

今日は担当する先生たちで評価の標準化のための会議を行いました。

生徒のレポートを読みあいながら、どのように校内評価を行うのか話していたのですが、話し合っているうちに、様々な課題が表面化してきました。

 

今回判明した一番大きな問題は、コーディネーターである自分を始め、IBのガイドの理解が正しくできていなかったことです。

より正確に言えば、IBのガイドは、IBO(国際バカロレア機構)が出している英語のものと、公式の日本語訳があるのですが、その翻訳のニュアンスの違いから、評価規準の読み方にズレが生じていたことです。私をはじめ多くの日本人の先生は日本語訳を参照していたのですが、ネイティブの先生は英語でガイドを読んでいます。私と、ネイティブの先生との意見があまりにもかみ合わないことから、今回の問題が判明しました。

 

いま「評価規準」と書いたのですが、この用語が問題でした。

日本語では「きじゅん」と同じ読み方ですが、ガイドには「規準」と「基準」の二種類が使われています。

 

改めて、英語版と日本語版を比べてみると、

criteria(criterion) → 評価規準

standards → 評価基準

rubric → 評価指標

という区別で使われています。

Students must define realistic criteria to measure the quality of the project's final outcome or product. Working with their superviser, students decide what constitutes a high-quality product/outcome. Some appropriate tools for setting standards and assessing quality include checklists or rubrics. Students document the criteria in their process journal and use them to assess the final outcome or product. (英語版ガイドp.44)

 

生徒は、自分のプロジェクトの最終的な成果や作品の質をはかる現実的な評価規準を決める必要があります。担当の指導教員と協力して、高品質な作品や成果を生み出すには何が必要かを決めます。評価基準の設定や質の評価に適したツールには、チェックリストやルーブリック(評価指標)などがあります。生徒は評価規準をプロセスジャーナルに記録し、最終的な成果や作品の評価に使います。(日本語版ガイドp.52、どちらも傍線筆者)

 

日本語訳ガイドを用いていた私たちは、これらを混同して使っていました。(ある人は「きじゅん」をクライテリアのつもりで話し、あるひとは「きじゅん」をルーブリックのことだと思う、など)

そのため、IBガイドの評価規準(クライテリア)について誤った理解をし、ルーブリックを適切に用ていなかったことが分かりました。生徒に一部誤った(ガイドの規準に合っていない、評価の対象にならない)レポートの書き方をさせていたのです。

 

さらに、先生も生徒も、課題についての評価規準(クライテリア)を自分で作って自分で評価するという方法に慣れておらず、それがこの問題を難しくしています。

①まずは課題の目標やゴールを明確にする

②目標やゴールに合わせた、課題のクライテリアを作る

 ※達成度を段階で示したルーブリックも作れると良い

③クライテリアに即して課題を実行する

④課題の出来を、クライテリアに沿って評価する

こういった、クライテリアとルーブリックをもとにした評価の方法をもっと理解していく必要があります。(私は、今日の話し合いを経てようやく腑に落ちました)

 

今日の収穫としては、ルーブリックは現時点での達成度を示す指標であり優劣を示す者ではない、という考えを同僚の先生から学びました。

ルーブリックを基にして生徒に示すのは、現時点でできていることであり、次の学びにつなげるためのフィードバックです。8だから良い、2だからダメ、と一律で判断するのではルーブリックの本来の目的から外れている。(本校では、IB評価で2以下を取った生徒は呼び出して面談をすることになっています)目の前の子どもの実情に合わせて、たとえば最大限の努力をして2をとったならむしろ褒めるべき、という話でした。

この発想は私にはまるでない考え方でしたが、こちらも大いに納得できるものでしたし、むしろ私が志向していることに近いと感じました。

 

まだまだ、理解できていないことがたくさんあります。

まずは明日生徒に謝って、さらに良いレポートが書けるように、できる限りサポートしたいです。

 

あと、このクライテリアとルーブリックの手法を、道徳科の評価に取り入れたらいいんじゃないか、というのが今日の思いつきです。