Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

「逆向き設計」での目標の立て方

在宅での勤務がずいぶん長くなってきました。

そんな中、今日は勤務校の教科の先生とオンラインで集まり、単元づくりの勉強会を行いました。

有志での集まりでしたが、新入職の先生(まだリアルでお会いしていない)も含め、7名の先生が参加してくださいました。

こんなふうに企画すると、乗ってきてくれる先生が多いのが、ありがたいです。


テーマは単元づくりなのですが、

今日は「逆向き設計」、とくに単元目標の立て方を中心に話し合いました。

私の方で事前にワークシートを用意し、それに書き込んできてもらい、みんなでそれを見ながら協議します。


ワークシートは、

1、単元名

2、学年

3、単元を通して生徒が理解すること(目標)

4、単元を通して身につけるスキル

5、重要な問い

6、評価方法

7、学習計画

8、教材

この順番で、書き込んでもらうようにしてあります。


「逆向き設計」については、ほとんど知らない、初めて聞いた、という方が大半だったため、みなさん単元の目標づくりに苦戦されていました。(私も数年前はそんな感じだった)


例えば、

竹取物語」を扱うとして、目標の欄に「『竹取物語』と現代の『かぐや姫』と比較する」などと書いた場合、

これは学習活動であり、単元を通した目標にはなりません。

こういう学習活動を通して、生徒がどんなことを理解するのか、といった視点を加える必要があります。

話し合う中で、「訳の違いは訳者や編者の意図が込められる」といった観点が出されました。この内容であれば、生徒が理解する内容につながります。


また、

小説を読む単元として、

目標の欄に「『この小説のテーマは何か』について考える」と書いた場合、

やはりこれも学習活動、もしくは授業中に扱う問いであり、単元を通した目標にはなりづらい。

そこで例えば「作者はなんらかの意図をもって小説を書く」「読者は、作品中の言葉に影響を受けて小説からテーマを読みとる」などと書いてみます。

これが、単元を通して生徒が理解すること、にあたります。

単元が終わったときに、このようなことが生徒の中に残っていてほしいと意図するわけです。


もちろん、単元の目標を「『羅生門』のテーマは、極限状態における人間のエゴイズムでる」などとしても良いのですが(その先生がそういうことを生徒に伝えたいと考えるのであれば)、

最初にそういう限定的な目標を立ててしまうと、その後の単元計画が膨らみにくくなる可能性があります。授業が、教材の読解に終始するような展開になりかねません。


先に挙げたような概念的な、抽象度の高い目標を掲げておく利点は、その後の単元計画を考えるときに、いろいろなアイデアが出やすくなることです。

教材を選ぶにしても、『羅生門』は読ませたいな、他にもあの作品はどうかな…などと、いろいろ考えが広がります。


もちろん、単元の目標を考えるときには、学習指導要領や、学校のカリキュラム、IB校であればIBのガイドなどを参照して決めていく必要があります。

ただ、自分もずっとそうだったのですが、

はじめに目標を明確にし、それを十分に達成できるための評価方法や学習計画、教材を選んでいく、という「逆向き設計」の考え方は、まだまだ浸透していません。

できる範囲で、みんなで勉強会でもやりながら、少しずつ取り入れていってもらうのがいいのかなと思います。


なにより、一人で単元計画を立てるより、みんなでわいわい話しながら、みんなで作った方が楽しい、ということもありますし。


今回は「逆向き設計」のごく基本的なら考え方を扱ったので、

次回以降は「概念ベース」「探究ベース」の単元づくりについて、具体的にはIBのユニット・プランナーの書き方をみんなで学んでみたいと計画しています。