Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

【単元案】童謡から物語を想像しよう

今日も校内のオンライン勉強会を行いました。

お互いにIBのユニットプランナー(単元計画)を作って共有し、話し合うというものです。

私は、中学1年生を想定して、童謡から物語を創作する単元を考えてみました。

 

小説を読むのが苦手、という生徒がいます。

よくよく話してみると、文字面を追いかけていても、それが意味として頭のなかでまとまっていない様子。

そもそも設定が分かっていなかったり、人物関係がつかめていなかったり、情景描写があっても頭のなかで映像化できていなかったり。

そういう生徒に対してどのようなアプローチが有効か、いまも模索中です。

 

ひとつ、なるべく早いうちにできるようになってほしいと思うのが、書かれてあることをもとに、想像するという行為。

行間を読む、というほど大げさなものでなくても、

書かれてある言葉を手掛かりにして、主人公のビジュアルを想像してみるとか、人物同士の関係性を考えてみるとか、書かれていない間にどのようなことがあったか、空白を埋めてみるとか、

こういう基本的な読み方を、授業を通して少しずつ身につけ、自分で小説を読めるようになっていってほしいと思います。

それに資するような単元ができればと、計画してみました。

 

【探究テーマ】

読者は、テクストに書かれている言葉を手掛かりに、書かれていないことまでも想像し、自ら物語を作り上げる。それが文学における作者と読者のコミュニケーションである。

【重要概念】コミュニケーション

【関連概念】受け手側の受容、自己表現

【グローバルな文脈】個人的表現と文化的表現

【探究の問い】

(事実的問い)物語の舞台はいつ/どこか。どのような登場人物がいるか。 それは作品のどこから読み取れるか。

(概念的問い)作者と読者は物語を通してどのようなコミュニケーションをしているか。

(議論的問い)物語のテーマを決めるのは作者か、読者か。

【リソース】

昔話と昔話をもとに作られた童謡(「桃太郎」「浦島太郎」など)

童謡(「しゃぼん玉」「サッちゃん」「アメフリ」「おもちゃのチャチャチャ」「大きな古時計」など、物語性があるもの)

童話(新見南吉、宮沢賢治小川未明など)

【スキル】

コミュニケーションスキル、創造的思考

【評価方法】

童話の分析レポート

童話をもとにした物語の創作

 

【学習内容】

第1次 童話の分析をする

・例として教師が選んだ童話を読み、設定や登場人物について学習する

・各自で童話を選び、自分で設定や登場人物を指摘し、ノートにまとめる(A:分析)、クラスで発表する

 

第2次 童話と童謡の比較をする

・「桃太郎」「浦島太郎」などを読み、童話と童謡を読み比べる

・ジャンルによる表現方法の違い、言葉の使われ方の特徴についてグループで検討する

 

第3次 童謡をもとに、童話を創作する

・好きな童謡を選び、各自で設定や登場人物について書かれている言葉をもとに想像し、創作ノートを作る

・ノートをもとにして、童話(物語)を創作する(C:創作、D:言語の使用)

 

例えば、童謡「サッちゃん」(作詞:阪田寛夫

一番は有名ですが、二番の歌詞はこうなっています。

サッちゃんはね

バナナがだいすき

ほんとだよ

 

だけどちっちゃいから

バナナをはんぶんしか

たべられないの

 

かわいそうね

サッちゃん

 サッちゃんの人物像がより詳しく描かれます。

語り手はどのような人物なのか、まだはっきりとはしません。

 

そして三番。

サッちゃんがね

とおくへいっちゃうって

ほんとかな

 

だけどちっちゃいから

ぼくのこと

わすれて しまうだろ

 

さびしいな

サッちゃん

 語り手のイメージが少し浮かんできました。

同時に、物語も動き出しました。

語り手は、サッちゃんのことを誰に語っているのか。

語り手とサッちゃんはどれくらい年が離れているのか。

語り手はサッちゃんのことをどう思っているのか。

いろいろと想像するポイントがあります。(「質問づくり」をやっても面白いかも)

 

たとえばこういう詩(歌詞)を分析しつつ読み、

設定や登場人物同士の関係について十分想像したうえで、自分の想像をもとにして短い物語を書いていく、という課題です。

 

こういう活動であれば、言葉をきっかけに想像する、ということや、

言葉を介した作者と読者のコミュニケーションについて、楽しく学ぶことができるのではないかと思います。