Senobi

私立の中高一貫校で国語を教えています。国際バカロレア、子どものための哲学、ワークショップ型の授業づくりに関心があります。

授業発想ツール「ラクイチカード」~『ラクイチ授業プランができるまで』⑭

『中学国語 ラクイチ授業プラン』には、巻末に付録のカードがついています。

(こんな実践本はなかなかないと思います)

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これは、ある日のミーティングで、執筆メンバーの一人の発言がきっかけで生まれたものです。

 

もともと、忙しくて授業準備をする時間のない先生に、すぐに使ってもらえる授業プランを載せる、ということで作っていたのですが、

ある時メンバーの一人が、「これだけ面白い授業アイデアが集まっているのに、ただ消費されるだけじゃもったいないなぁ…」と話し始めました。

もっと積極的な使い方の提案ができないか、ということのようです。

 

面白そうなので、みんなで話を聞いてみることにしました。

 

その人の説明は、こんな感じです。

それぞれの授業プランは「学習内容(何を学ぶか)」と「学習活動(どのような方法で学ぶか)」の組み合わせでできている。

例えば「4コマ漫画故事成語故事成語を4コマ漫画で表現する)」という授業プランであれば、学習内容が「故事成語」で学習活動が「4コマ漫画を描く」というふうに分けて考えられる。

そして、その片方を変えてみたり、組み合わせを変えていけば、もっといろんな授業アイデアが浮かぶんじゃないか。

 

なるほど。言われてみれば、自分の授業づくりを振り返ってみても、教科書教材や学習内容を先に設定しておいて、どんな学習活動をしようかなと、いろいろな可能性を想像しながら組み立てています。

それをもっと、気軽にみんなができるようにすれば、授業づくりのアイデアが広がるのではないか。

私としては「消費される」だけの本のイメージしか思い描けていませんでしたが、この話を聞いて、もっと積極的な使い方が提案できるという方向性が見えてきました。

授業づくりがもっと楽しくなるような、ツールとしての本。

 

この話を横で聞いていた編集者の方が、「カードにしてみたらどうだろう」と提案してくれました。

カードに「学習内容」や「学習活動」を書いておいて、ランダムに組み合わせることで、新しい授業アイデアを思い浮かべる。

そういう授業発想ツールになるのではないか、という提案です。

 

こういう経緯で、巻末の「ラクイチカード」が生まれました。

自分では思いつかなかったアイデアを、みんなで話しながら形にしていく。建設的なミーティングは、これが楽しいですね。

 

 

さて、巻末のカードを切り離すとこんな感じになります。

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ピンクが素材(学習内容、ソフト)、緑が学習活動(ハード)です。

 

机の上に適当に並べて、面白い授業になりそうな組み合わせを考えてみてもいいでしょう。

全部裏にして一枚ずつめくり、出たカードで授業アイデアを考える、というワークもできます。

 

ここに並べただけでも、組み合わせていけば、

・詩をもとに物語を書いてみよう

故事成語を使って食レポしてみよう

・物語の登場人物にキャッチコピーをつけよう

・部首かるたを作ろう

・質問ゲームで歌人を当てよう

など、いろいろな授業アイデアを考えることができます。

 

実際にこのワークを、校内の教科会、有志の国語の勉強会などで実践しましたが、どこでもかなり盛り上がりました。

何もなしで授業アイデアを考えると、どうしても過去の授業と似たようなアイデアになりがちです。

カードで出た内容で考える、という仕掛けを取り入れることで、自分では思いつかないような発想を得ることもできます。

 

知り合いの大学の先生と協力し、国語科教育法の授業で使ってもらったこともあります。

カードの組み合わせをもとに、1時間完結の授業をつくる、という課題です。

これをすることで、授業づくりの良いトレーニングになることも分かりました。

 

このカードのアイデアによって、忙しいときに消費するマニュアル本としての機能だけでなく、みんなで楽しく授業アイデアを考えるためのツール本としての機能も持ち合わせることができ、これまでにないユニークな本になったと思います。

 

イデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない。

(ジェームズ・ウェブ・ヤング)